iASPPよるp53経路の不活性化機構の詳細を明らかにすることを目的として研究を展開した。子宮頸癌細胞において、両者の結合があるのかを明確にするため、iASPPの免疫沈降を行った結果、iASPPがp53に直接に結合すことで、p53の機能を阻害することを明らかにした。癌の転移に深く関わるmiR-20aなどmiR-17-92a clusterは、p53によって抑制されていることがこれまで報告された。我々はiASPP遺伝子がいかにp53を制御することによって、miR-20aの発現、また子宮頸癌細胞の浸潤及び抗がん剤耐性の獲得に関与するのか、詳細に解明した。iASPP遺伝子の導入或は特異的抑制により、定量PCR法によるmiR-20aの発現を分析したところ、miR-20aの発現はiASPPによって促進されることや、p53によって抑制されることを発見した。そして、iASPPによって誘導された子宮頸癌細胞の浸潤及び抗がん剤耐性は、miR-20aのノックダウンによって抑制されることを見出した。更に、miR-20aの標的遺伝子を検索したところ、FBXL5とBTG3を同定した。FBXL5とBTG3遺伝子の導入で、子宮頸癌細胞の浸潤及び抗がん剤耐性が、著しく抑制されたことを明らかにした。以上の研究によって、iASPP遺伝子の過剰発現は、子宮頸癌の転移を促進し、その発現が、miR-124などの癌抑制型miRNAsにより制御されていることが判明した。iASPPはp53遺伝子経路を介して、その下流に位置するmiR-20aなどの発現を制御することで、子宮頸癌の転移能及び抗がん剤耐性の獲得に関与するという重要な成果が得られている。本研究により得られた知見は、今後子宮頸癌の根絶を目指す癌研究の発展に大きく貢献していると考える。
|