研究課題/領域番号 |
15K10699
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
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研究分担者 |
鈴木 史彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20400343) [辞退]
太田 剛 山形大学, 医学部, 助教 (50375341)
清野 学 山形大学, 医学部, 医員 (40594320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子宮体部漿液性腺癌 / メタボローム解析 / 抗がん剤耐性 / パクリタキセル |
研究実績の概要 |
ヒト子宮体部漿液性腺癌細胞株であるUSPC-1とUSPC-1をパクリタキセル存在下で維持しパクリタキセル耐性を獲得した細胞株PTX1を用い、それぞれパクリタキセル15 nM存在下で24時間培養しメタボローム解析を行った。その結果、野生株とパクリタキセル耐性株におけるメタボロームプロファイルを作製した。グルタチオン代謝経路においては、USPC-1とPTX1の細胞内グルタチオン濃度を比較すると、PTX1でグルタチオン濃度が高い傾向にあった。また、USPC-1はパクリタキセル投与により細胞内のグルタチオン濃度が上昇傾向にあったが、PTX1ではパクリタキセル投与を行っても細胞内グルタチオン濃度に変化はなかった。この結果に加え、グルタチオンは化学療法による癌細胞の活性酸素上昇(酸化ストレス)から防御する機能を有すると考えられていることから、子宮体部漿液性腺癌において、パクリタキセル獲得耐性化機序が細胞内グルタチオン濃度上昇に起因する可能性について検証を行うこととした。グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンから構成されるたんぱく質であり、システインの取り込みを担うシスチン・トランスポーターに着目した。システイン・トランスポーターの阻害剤であるスルファサラジンを用いたところ、スルファサラジンとパクリタキセルをPTX1に同時投与したところ、パクリタキセル単独投与に比べて生細胞数の減少をもたらすことが明らかになった。この結果は、スルファサラジンによってPTX1の細胞内グルタチオン濃度を減少させることによりパクリタキセル耐性が減弱した可能性を示唆するものと考えた。スルファサラジンが子宮体部漿液性腺癌に有効であることを示すことができれば臨床上大きな意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画は、抗がん剤耐性株におけるメタボロームプロファイルを作製することであったが、パクリタキセル耐性株におけるメタボロームファイルを予定通り作成し計画を遂行できた。さらに、これまでの報告をもとに、グルタチオン代謝経路に着目し現在研究を進めており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1、スルファサラジンによりみられたパクリタキセル耐性の減弱という現象がグルタチオン濃度減少によるものか検討する。 PTX1細胞内のグルタチオン濃度を測定し、スルファサラジン投与によりグルタチオン濃度が減少することを確認する。また、シスチン・トランスポーターの安定性に関わるとされる細胞表面マーカーCD44の発現量をUSPC-1とPTX1において検討する。さらに、PTX1にスルファサラジンとパクリタキセルを同時投与することでパクリタキセル単独投与よりも細胞内活性酸素が上昇していることを確認する。
2、スルファサラジンの抗腫瘍効果をin vivoで確認する。 上記1の実験と並行してスルファサラジンの抗腫瘍効果を動物実験で検討する。ヌードマウスにPTX1を皮下および腹腔内に移植する。移植部位に関して、腫瘍が観察しやすく腫瘍径を測定することが可能である理由から皮下移植モデルを使用する。また、臨床的に子宮体部漿液性腺癌が容易に腹腔内播種を来すことを考慮し、腹腔移植モデルを用いる予定である。それぞれの移植モデルにおいて腫瘍が形成し始める約7日目からスルファサラジンとパクリタキセル同時投与、パクリタキセル単独投与を行う。皮下移植モデルでは腫瘍径を継時的に観察する。また薬剤投与終了後の腫瘍を摘出しCD44の発現を免疫組織化学染色で検討する。腹腔移植モデルでは腹囲や体重測定を継時的に行い、移植から1か月後にマウスをsacrificeし腹水量および播種巣の数、腫瘍重量を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算として計上していた旅費を使用しなかったことと、物品費が当初の予算額を下回ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究では候補代謝産物と抗癌剤耐性の関連を検証していく必要があり、代謝産物の測定が必要不可欠となる。測定には高額な試薬が必要となるため、その試薬に充当する予定である。メタボローム関連の研究は進歩が著しいため、旅費に関しては、情報収集を積極的に行い、本研究の成果を発表するための旅費として使用する予定である。
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