研究実績の概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌及びその前癌病変(CIN) の原因である。HPVは遺伝子配列の異なるバリアントや準種と呼ばれる突然変異株を多数生じる。本研究は日本人女性の子宮頸癌・CIN患者で高頻度に検出されるHPV16/52/58型を対象に 各型のバリアント・準種が子宮頸部発癌にどのように関与しているかを検討した。 (1) HPV52/58の全ゲノム配列解析: 子宮頸癌及びCIN患者検体から抽出したDNAからPCRにてHPV52/58の全ゲノム領域を増幅し次世代シークエンサーによる配列解読を行った。HPV52/58のバリアント分布は、HPV52でlineage B , HPV58でlineage A に著しく偏りHPV52/58間で異なるウイルス遺伝子産物内にアミノ酸残基の多様性が観察された。 (2) HPV16/52/58の多様性解析:子宮頸癌・CIN患者を対象に次世代シークエンサーによる配列解析を行った。その結果、0.5%以上の頻度で多様性を示すゲノム配列部位が多数見出された。その大部分がC to TまたはG to A置換変異であったことからAPOBEC3蛋白質の関与が示唆された。 (3)HPV16型のバリアント分布および新規バリアントの同定:HPV16型のバリアント分布を細胞診正常者,CIN1, CIN2/3, 子宮頸癌患者でそれぞれ比較検討した。lineage Aが大部分を占め、特にA4バリアントが子宮頸癌への関連が有意に高いことを示した。また本研究で lineage Aの中で独立したクラスターを作りE7、E2、L2蛋白質に特徴的なアミノ酸置換を有するバリアントを新たにA5バリアントとして同定した。 (4)HPV16型陽性子宮頸癌患者の型別・進行期別の予後:HPV16陽性進行子宮頸癌患者で予後が良好であった。放射線・抗癌剤の感受性の違いが原因として考えられた。
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