研究課題/領域番号 |
15K10703
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
碓井 宏和 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90375634)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 絨毛性疾患 / 血清マーカー / miRNA / セルフリー核酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、侵入奇胎の腫瘍マーカーとして有用性のある血清miRNA(miRNAプロファイル)を同定することを目的とする。また、同時に、侵入奇胎の発症機序の解明に近づくことを目指す。 侵入奇胎は、主に雄核発生奇胎後に発症する。転移する場所が、子宮筋層・肺に限られること、hCGを産生すること、主に子宮内容除去術終了後2~8週間に発症することなど、均一した性質を有する。 本研究の最大のコンセプトは、侵入奇胎発症時の奇胎組織の特徴を捕まえることにある。このため、従来から進めてきた子宮内容組織(胞状奇胎組織)の直接の解析ではなく、侵入奇胎成立時の、血清miRNAを研究対象とした。 侵入奇胎および胞状奇胎患者の血清中から、既報通りmiRNAが抽出できるか検証した。コントロール血清4例と侵入奇胎例2例、胞状奇胎例2例に対して、EXIQON社のmiRCURY RNA Isolation Kitを用いて、miRNAの抽出を行った。血清miRNAが抽出されていることを、hsa-miR-23a-3p(血清・血漿中で最も安定発現していることが知られている)の増幅により確認した。雄核発生奇胎組織で高発現しており、血清中にもセルフリー核酸として存在することが報告されている第19番染色体上のC19MC cluster上のmiRNAであるhsa-miR-517a-3p, hsa-miR-520bの増幅を、侵入奇胎および胞状奇胎患者の血清miRNAをテンプレートとして検証した。胞状奇胎の子宮内容除去術前の血清では、全2例で増幅を確認したが、侵入奇胎例では、1例で増幅を確認、1例では、増幅が確認できなかった。コントロール血清全4例で、hsa-miR-517a-3p, hsa-miR-520bの増幅は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象疾患・コントロールの血清から、セルフリーmiRNAが十分量回収されていることは、確認できた。しかしながら、侵入奇胎・胞状奇胎由来miRNAの含量の評価が当初は、十分にできなかった。このため、当初予定されていたmiRNAアレイ解析まで、実験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
雄核発生胞状奇胎で発現が多い父性発現miRNAであるhsa-miR-517a-3p, hsa-miR-520bを侵入奇胎・胞状奇胎由来miRNAの指標とした。これらのmiRNAが、奇胎組織中に多く存在することは確認した。また、侵入奇胎・胞状奇胎セルフリーmiRNAをテンプレートとした場合にも、増幅することができる症例があることは確認できた。 本年は、当初の予定通り、回収された血清miRNAを用いて、アレイ解析を行い、侵入奇胎例および侵入奇胎にならなかった胞状奇胎、および非妊娠コントロールでmiRNAプロファイルのの比較を行う予定である。侵入奇胎になった症例で特異的なmiRNAの抽出を目指す。見つかったmiRNAに対しては、血清miRNAに対して、個別にバリデーションまでを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額であり、適切な購入物品がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度予算として、消耗品の購入に充てる。
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