研究課題
卵巣癌では、腹腔内播種、転移が重要な予後規定因子であり、これらの病態とEMT が密接に関係する。またhScrib やPar3 といった細胞極性蛋白質の機能低下は、EMT 化の一端を担っているとされる。上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに、本研究ではまだ十分に解明されていないことから、平成27年度、28年度は主に卵巣癌細胞におけるPar3 複合体の機能解析とEMT 誘導について培養細胞を用いた基礎的検討を行い、新規EMT 阻害剤の開発に向けた基盤となる研究を行った。細胞極性制御異常と癌の浸潤能、転移能について多くの報告がされている。Par3 と結合する分子にaPKC があるが、過剰発現が卵巣癌の予後と関連があるという報告がある。そこで、平成29年度は患者から手術時などで採取された病理組織検体を用いて、STAT3 活性とPar3 の発現について調べた。更に、手術時に得られた癌の進展、播種の程度、転移巣の部位などの情報と照らし合わせ、予後との相関について調べた。当初の計画では臨床検体を用いて、卵巣癌組織型別の予後とPar3発現の関連を調べることとしていたが、特にPar3の細胞内発現の高い明細胞癌についての解析を行った。東京大学附属病院にて研究目的について同意の得られた卵巣癌50例の凍結検体からDNAを抽出しマイクロアレイ解析をしたところ、Par3の低発現が予後良好と相関していることがわかった。(p=0.0033)これまで多くの癌腫において、Par3の発現欠失が癌の悪性化と正に相関するとされてきたが、卵巣癌においては既報と異なった結果となったため、論文として報告を行った。Par3の高発現が予後不良因子となる原因として、細胞内の発現局在異常が理由として挙げられると考えている。引き続き臨床検体数を増やし、またマウスモデルを用いたin vivoの解析は今後行う予定である。
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