研究課題/領域番号 |
15K10712
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高津 亜希子 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (90447730)
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研究分担者 |
塩沢 丹里 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20235493)
宮本 強 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70418721)
安藤 大史 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (80722925)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分葉状頸管腺過形成 / 悪性腺腫 / 胃型腺癌 / 臨床診断 / 子宮頸管細胞診 / 胃型粘液 / MRI |
研究実績の概要 |
子宮頸部に多嚢胞性の病変を形成する良性疾患、分葉状頸管腺過形成(LEGH)の管理上の問題点は、極めて予後不良の悪性腫瘍である子宮頸部悪性腺腫(MDA)等の胃型腺癌との鑑別が困難であること、またこれらの悪性病変の発生母地となる可能性が指摘されている点である。我々は2011年に細胞診、MRI、胃型粘液検出を組み合わせた、これらの疾患の術前鑑別(臨床診断)法およびmanagement protocolを提唱した。本研究では、それに基づいて管理した症例の経過観察を行い、この管理法が有用であることを示してきた。特に、LEGH疑いと臨床診断した症例がfollow-up中に病変が増大した場合に、胃型腺癌の前癌病変として提唱されているLEGH with atypiaがみられることが判明したため、病変の増大が悪性化あるいは潜在的な悪性病変を見出す徴候である可能性が考えられた。 近年、胃の幽門腺腺腫などの粘液産生性新生物においてGNAS遺伝子の活性化変異が報告され、LEGHにおいても関連が報告されている。そこで、当院で診療を行い経過が明らかな14症例(MDA2病変,LEGH with atypia5病変,LEGH10病変)で変異解析を行った。LEGH with atypiaの2症例に変異を認めた。うち1例は、LEGH疑いと臨床診断していたものの経過観察中に増大傾向があったため手術を行った症例であった。もう一方の症例ではLEGH病変領域には変異を認めなかったが,LEGH with atypiaの部分にのみ変異が認められた。これらのことから、GNAS遺伝子変異とLEGHの悪性度上昇が関連している可能性が示唆された。 現在、LEGH病変および同症例の白血球から抽出したDNAの全エクソン解析を行っており、LEGHの発生に関わる遺伝子変異を同定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経過観察例の解析を行うことにより、臨床診断法の正確さが確認されつつあり、また悪性化の臨床的徴候についても明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の計画通りに進める。現在、数例の症例でLEGH病変の新鮮凍結組織切片を作成し、Laser microdissection(LM)法で病変組織のみの採取を開始し、微量DNAを抽出し、次世代シーケンサーによる全エクソン解析を行っている。また同時に、同症例で白血球から抽出したDNAで全エクソン解析を行っている。生殖細胞系列のゲノム情報と比較することでLEGHの発生に関わる遺伝子変異を見出すことを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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