研究課題
本研究では、子宮平滑筋細胞において、エピジェネティクス変異により発現の変化したマスター遺伝子が下流の遺伝子の発現を変化させることで子宮筋腫が発生するという仮説のもとにマスター遺伝子の特定を目指した。これまでにゲノムワイドなDNAメチル化およびmRNA発現データを基にした統合的解析によりマスター遺伝子、あるいは上流の制御遺伝子の候補として SATB2 およびNRG1の2遺伝子を抽出した。まず、これらのmRNA発現およびDNAメチル化状態を多症例の子宮筋腫および正常筋層を用いて症例ごとに比較したところ、これらの遺伝子はそれぞれ90%および80%の症例で子宮筋腫特異的に高発現・高メチル化状態にあることが分かった。さらに,これらの遺伝子の機能を類推するため,ヒト子宮平滑筋細胞株でそれぞれの遺伝子の過剰発現株(SATB2およびNRG1株)を作成し、トランスクリプトーム解析およびパスウェイ解析を行った。SATB2株およびNRG1株で発現変異した遺伝子には、子宮筋腫の発生・進展に最も重要なサイトカインと考えられるTGFB3が含まれていた。また、SATB2株およびNRG1株で子宮筋腫と共通したパスウェイとしてWnt/β-catenin およびTGF-βのシグナル経路が抽出された。SATB2 株と子宮筋腫のみで抽出されたパスウェイにはVEGF、PDGFおよびIGF1等を含む増殖因子の経路が含まれ、一方でNRG1株と子宮筋腫のみで抽出されたパスウェイにはレチノイン酸シグナル経路が含まれていた。従って、これらの細胞株で抽出されたパスウェイには、現在、子宮筋腫の発生・進展に関与すると考えられる要因の大部分が網羅されていた。以上の結果は、SATB2およびNRG1が上流の制御因子として子宮筋腫の発生・進展の一端を担っている可能性を示唆している。
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