研究実績の概要 |
当施設で加療を行った子宮内膜癌の臨床背景と内分泌学的プロファイリングの評価を行うことで、子宮内膜癌への内分泌学的異常の関与を検討した。その結果、子宮内膜癌症例では高PRL血症とインスリン抵抗性が高頻度に認められ、これらはI型の子宮内膜癌に多い傾向がみられた。しかし、I型の子宮内膜癌に高率に認められるPTEN遺伝子の変異は高PRL群では有意に少なく、PRL受容体を介した新たな子宮内膜の発生機序が考えられた。既知の報告からは高PRL血症ではRas遺伝子の異常が疑われ、今後の研究課題としている。 また、妊孕能温存を目的としてMPA療法が行われた症例の後方視的検討では、ドパミン作動薬による高PRL血症の正常化が行われた群は、無治療群に比較して有意に再燃が抑制されていることが示され、論文化した。 基礎研究では、ヒトの正常子宮内膜を模倣した子宮内膜腺上皮不死化細胞株(EM-E6/E7/TERT)と子宮内膜類内膜癌G1細胞株(Ishikawa細胞)を用いて、両細胞株にPRLを添加し増殖能を比較した。また、PRL受容体の下流シグナルであるJak2, Stat5の発現を評価しPRLを介した子宮内膜癌の発癌・進展機構を解析した。その結果、PRL受容体の下流にある3つのシグナル経路のうち、Ishikawa細胞においてPRL添加でMAP経路の活性が認められた。このことから、PRLはMAP経路を介して子宮内膜癌の増殖機構に関与していることが示され、これについても論文化した。
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