研究実績の概要 |
【目的】Lynch症候群は大腸癌や子宮体癌などの発症リスクを高める遺伝性腫瘍である。これまでの研究により、DNA mismatch repair geneであるhMLH1, hMSH2, hMSH6 などの生殖細胞遺伝子変異によって引き起こされることが明らかになっている。しかし、一部のLynch症候群患者には明らかなmutationが認められないなど、geneticな異常以外の発癌メカニズムが示唆されていた。そこで、epimutation(遺伝するDNAのメチル化)がLynch症候群の発癌に寄与するか検討を試みた。 【方法】慶應病院産婦人科において子宮体癌と診断された患者から、書面による同意を得た上で末梢血および子宮体癌組織の提供を得た。各サンプルよりDNA を抽出し、末梢血DNAではhMLH1, hMSH2, hMSH6のプロモーター領域における異常メチル化を、子宮体癌組織DNAではhMLH1, APC, E-cadherin のプロモーター領域における異常メチル化を、それぞれMethylation specific PCR法にて解析した。末梢血DNAのMSP解析で、いずれかの遺伝子に異常メチル化を認めた患者をepimutation保因者として選別した。また、子宮体癌組織DNAのMSP解析で2 つ以上の遺伝子にメチル化が認められた患者をエピジェネティック発癌群、1 つもメチル化が認められなかった患者をコントロール群として選別した。 【結果】同意の得られた子宮体癌患者90例より提供された末梢血DNA全例でMSP解析は可能であったが、epimutation保因者は1例も認められなかった。また、90例のうち、研究用に子宮体癌組織検体が入手可能であった25例についてMSP解析を行った結果、2例がエピジェネティック発癌群、16例がコントロール群であった。
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