平成29年度までに、子宮体癌のバイオマーカー候補となる新規EMT関連遺伝子の同定に関する検討を行った。 1. 新規EMT関連遺伝子の候補は、①網羅的発現解析によりEMT誘導転写因子群を抽出、②癌肉腫と体癌を比較して癌肉腫に高発現している遺伝子を抽出することにより行った。 子宮体部癌肉腫、子宮体癌および子宮肉腫を対象に網羅的発現解析を実施した結果、癌肉腫は子宮体癌よりも肉腫と類似性を認めた。また、EMT関連遺伝子群でクラスタリング解析を行ったところ、癌肉腫における発現パターンは子宮体癌とは全く異なっていた。さらにレーザーマイクロダイセクションを用い、癌肉腫の癌部と肉腫部でEMT関連遺伝子群の発現を比較したところ、肉腫部でZeb、Twist、SnailなどのEMT誘導転写因子およびそのパスウェイに関与する遺伝子群の高発現を確認した。 2. 抽出した遺伝子の機能解析については、癌肉腫細胞株や既知の体癌細胞株を使用し、増殖能、浸潤能への関与を検討中である。 3. 抽出した遺伝子が予後および再発のバイオマーカーとなるかの検討においては、癌肉腫および子宮体癌の臨床検体を用いて、リン酸化SMAD2/3の免疫組織化学染色を行いTGF-βシグナル伝達系を評価した。癌肉腫の癌部においては、子宮体癌と比較してリン酸化SMAD2/3が有意に高発現を示した。今後、リン酸化SMAD2/3の発現と予後の関連を検討中である。
|