研究実績の概要 |
本年度は臨床的な検討として、HPV陰性腺癌の発生部位と診断上の問題点を検討した。また、腫瘍免疫学的解析については、CD4,CD8,CD20,FOXD9の免疫染色を実施し、HPV陽性腺癌と陰性腺癌で細胞浸潤数に差があるか検討した。 腫瘍局在の検討では、HPV陰性腺癌20例で検討したところ、腟部に主病変を認めた症例は7例にとどまり、このほかの13例は内頸部に主病変が存在した。これら13例のうち3例はコルポスコピーで外子宮口付近に限局した病変を観察可能であったが、10例は腟部に病変を認めず、診断には頸管内の組織採取が必要であった。以上から、HPV陰性腺癌は腫瘍が頸管内に限局して視認困難な症例が半数以上を占め、診断には頸管内病変の存在に留意した検索が重要であることが示された。 免疫学的検討では、癌実質部に浸潤するCD8,CD4,CD20,FOXP3陽性細胞の密度を検討した。まず、HPV陽性11症例と陰性症例7例について、自動染色によって各マーカーを染色したのち、バーチャルスライドとして取り込み、さらにTissue Studioによって癌実質部での陽性細胞の浸潤数を自動計測し、1mm2あたりの免疫細胞浸潤を計算した。HPV陽性腺癌とHPV陰性腺癌で各免疫細胞浸潤数に差があるか検討したところ、4種の細胞全てで浸潤数に有意差はなかった(CD8:P=0.659、CD4:P=0.930、CD20:P=0.930、FOXP3:P=0.425)。これらのことから、主な免疫担当細胞の腫瘍認識はHPV陰性腺癌と陽性腺癌で差はないことが示唆された。
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