平成29年度に新規治療した子宮頸部HPV陰性腺癌症例は2例であった。これらを加えて、前年までに検討した臨床病理学的特徴の検討を進めた。 研究分担者川井田は、他大学の病理医とHPV陰性腺癌の組織型分類について、自験例をもとに検討した。結果、従来、通常型に分離していた症例でHPV陰性であった症例の多くは少なくとも一部に胃型腺癌の部分を認め、新分類では胃型腺癌に分類できる可能性がある。 また、研究代表者は子宮頸部陰性腺癌の分子生物学的特徴を検討した。HPV陽性腺癌5例と陰性腺癌6例の新鮮凍結組織を用いてmRNAを抽出し、Agilident SuperPrint G3 Human Gene Expression 8x60K v3 Microarrayを用いて発現する遺伝子の解析を行った。細胞内シグナルや調節遺伝子の解析はweb上のオントロジー解析ソフトであるIngenuity Pathway Analysis (IPA)を用いた。1500の調節遺伝子を各々抽出したところ、約1300種の遺伝子発現が両群で相似していたのに対し、180種の遺伝子は異なる発現様式であった。次に陰性腺癌において陽性腺癌に比べて活性化している癌シグナルを解析したところ、EIF2シグナルが陰性腺癌において活性化し、Sirtuine シグナルが抑制されていた。調節遺伝子ではNUPR1、GLI1などが活性化、RBPJ、SOX3、EGFRなどが抑制されていた。
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