研究課題
抗癌剤抵抗性の難治性卵巣癌に対してはセカンドライン以降に確立された治療法が乏しい。本研究は難治性卵巣癌にドラッグリポジショニングを導入するための基礎研究である。卵巣癌組織や腹水細胞からprimary culture(初代培養)を行い、薬剤感受性試験、ゲノム解析および遺伝子発現解析を施行、パスウェイ解析上で読み解く。本成果によりコンパニオン診断に基づいたドラッグリポジショニングのためのパイプラインが確立されれば難治性卵巣癌の奏効や予後の改善が期待されるだけでなく副作用の軽減や医療経済上も有用となる可能性が高く、患者自身の生活の質(Quality of life: QOL)向上も可能となる。本研究では全期間を通して患者本人より検体使用の同意が得られた卵巣癌例の新鮮癌組織または腹水細胞より初代培養を施行している。樹立可能であった細胞を対象に薬剤感受性試験(drug sensitivity and resistance testing: DSRT)にて高感受性を示す薬剤を検出するとともに、ゲノム解析と遺伝子発現解析から薬剤感受性に関連する遺伝子を同定し、パスウェイ解析にてドラッグリポジショニング候補薬を同定する。このようなアプローチを構築することで個別化医療を確立するための基盤的検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
申請者らは卵巣癌、卵管癌および腹膜癌を対象とした腹水からの初代培養を施行している。今年度はこれまでの手技に加え、培養液中に腹水上清を添加することでより生体内に近い培養環境を作り出し、初代培養が高率に成功した。現在は最適化した初代培養細胞方法を用いて薬剤感受性試験系の構築を行っている。
これまで組織検体を使用した培養法は成功率が低いことが課題であったが、我々が現在までに確立した成功条件と三次元培養手技を応用することで初代培養成功率の向上を目指している。今後は新規開発技術として、腹水細胞上清に含まれるサイトカインの分析及び、卵巣癌における細胞増殖性の比較から培養条件の至適化を行う予定である。
多数例を集積してから同時に解析することにしたため。
検査委託、論文成果準備料・投稿料に充当予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)
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