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2015 年度 実施状況報告書

HNF-1β高発現により免疫抑制環境にある卵巣明細胞腺癌の免疫抑制環境の改善

研究課題

研究課題/領域番号 15K10731
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

藤田 知信  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20199334)

研究分担者 岩田 卓  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30296652)
河上 裕  慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード卵巣明細胞腺癌 / HNF-1β / 腫瘍内浸潤リンパ球 / がん微小環境 / 癌免疫抑制環境制御
研究実績の概要

本研究では、卵巣明細胞腺癌(OCCC)に高発現するHNF-1β による免疫抑制的・がん細胞進展促進的ながん微小環境を、臨床検体サンプルを用いて検討し、新しい診断・治療法の開発基盤を構築することを目指す。2004~2011年のステージI-II手術検体41例を用いてCD3,CD4,CD8,FOXP3免疫組織染色し画像解析ソフトを用いて定量的解析行い予後との関連を検討した。その結果、CD4、CD3、CD8陽性細胞間には強い相関が認められた。またMann-Whitney U test、Kaplan-Meier analysisでもCD3、CD4、CD8高値は予後良好、FOXP3高値は予後不良の傾向を認めたがいずれも有意では無かった。またNFB、IL6陽性細胞の染色状態は病理医によるスコアリングを行い、陽性細胞が多いと予後不良の傾向を認めたが同様に有意では無かった。これら腫瘍内浸潤リンパ球数は大腸がん、非小細胞肺がん、子宮頚がんにと比較すると圧倒的に低値であり、OCCCでは他の癌種と異なり初期のステージでもIL6高値で強い免疫抑制環境が既に構築されていることを反映しているとためと考えられた。昨年までの解析からOCCCにおいてHNF-1βを抑制すると、NF-kBやSTAT3の活性が抑制されることによりIL-6の産生が抑制され、さらにDCが活性化されT細胞刺激能も増強することがin vivoにおいても示された。したがって、HNF-1βはOCCCの癌免疫抑制環境に関与するとともに、それを解除する標的分子となる可能性が示された。そこでOCCC細胞株を用いてIL6を指標にしてdrug repositioningによるスクリーニング系を確立し、現在スクリーニングを行っており、IL6分泌を抑制する数種の候補分子の存在を確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

OCCC臨床検体サンプルを用いて検討し、新しい診断・治療法の開発基盤を構築することを目指すことを計画した。研究実績で明らかにしたようにOCCCでは明らかに腫瘍浸潤リンパ球が少なく、網羅的な遺伝子発現法により浸潤リンパ球関連遺伝子発現を指標として特異的遺伝子発現との関連による解析法は浸潤リンパ球関連遺伝子発現が低いかとが予想され、他の癌種と同様な解析法は困難な可能性が示された。そこでHNF1昂進により下流で高発現しているIL6を指標としてdrug repositioningを行いそこからNHF1発現を制御する標的分子を同定し、逆にHNF1の発現を調べることによりその調節機構を明らかにする。現在、OCCC細胞株を用いIL6を指標としたスクリーニング系を確立し、既存薬ライブラリーからのスクリーニングを行っている。これまでに数種の薬剤がIL6産生を抑制することを確認している。以上、ほぼ順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

HNF-1β昂進により下流で高発現しているIL6を指標としてdrug repositioningによるスクリーニングを継続し、標的分子の解析を行う。これら薬剤とHNF1の発現との関連を調べ免疫環境改善標的の可能性を検討する。また臨床検体の収集を継続する。収集した臨床検体を用いて標的分子の発現を免疫染色やRT-PCRを用いて測定し、IL6との関連を検証する。臨床情報との関係を解析しこれら標的分子がHNF-1βによる免疫抑制病態の指標となり得るバイオマーカーになり得るかを検討する。上記in vitro実験、マウスモデルin vivo実験(必要に応じて実施)、HNF-1β発現による免疫抑制環境のバイオマーカー、臨床検体を用いた解析結果を総合して、卵巣明細胞腺癌に対する新しい治療法開発の可能性を検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Aberrant Myosin 1b Expression Promotes Cell Migration and Lymph Node Metastasis of HNSCC.2015

    • 著者名/発表者名
      Ohmura G, Tsujikawa T, Yaguchi T, Kawamura N, Mikami S, Sugiyama J, Nakamura K, Kobayashi A, Iwata T, Nakano H, Shimada T, Hisa Y, Kawakami Y.
    • 雑誌名

      Mol. Cancer Res.

      巻: 13 ページ: 721-731

    • DOI

      10.1158/1541-7786.MCR-14-0410

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Phase I pilot study of Wilms tumor gene 1 peptide-pulsed dendritic cell vaccination combined with gemcitabine in pancreatic cancer2015

    • 著者名/発表者名
      Mayanagi S, Kitago M, Sakurai T, Matsuda T, Fujita T, Higuchi H, Taguchi J, Takeuchi H, Itano O, Aiura K, Hamamoto Y, Takaishi H, Okamoto M, Sunamura M, Kawakami Y, Kitagawa Y.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 106 ページ: 397-406

    • DOI

      10.1111/cas.12621

    • 査読あり
  • [学会発表] がんワクチン後の予後を予測する血液バイオマーカーの道程とその制御2015

    • 著者名/発表者名
      藤田知信、野路しのぶ、南雲春菜、早川妙香、西尾浩、杉山重里、坪田欣也、中村謙太、岡本正人、桜井敏晴、松枝智子、伊東恭悟、竹之内寛子、硲彰一、岡正朗、谷口智憲、河上裕
    • 学会等名
      第43回日本臨床免疫学会総会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-10-22 – 2015-10-24
  • [学会発表] Differential prognostic roles of tumor infiltrating lymphocyte in patients with resected non-small cell lung cancer2015

    • 著者名/発表者名
      Kinoshita Tomonari, Fujita Tomonobu, Muramatsu Reiko, Hayashi Yuichiro, Noji Shinobu, Sakura Toshiharu, Asamura Hisao, Kawakami Yutaka
    • 学会等名
      ICCIM2015 (19th JACI & 23rd MMCB)
    • 発表場所
      東京大学伊藤国際学術センター内伊藤謝恩ホール(東京都文京区)
    • 年月日
      2015-07-09 – 2015-07-11
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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