研究実績の概要 |
本研究では、卵巣明細胞腺がん(OCCC)に高発現するHNF-1β による免疫抑制的・がん細胞進展促進的ながん微小環境を、臨床検体サンプルを用いて検討し、新しい診断・治療法の開発基盤を構築することを目指す。平成27年度卵巣明細胞腺癌(OCCC)手術検体41例を用いて、腫瘍浸潤CD3,CD4,CD8,FOXP3数が、大腸がん、非小細胞肺がん、子宮頚がんにと比較すると圧倒的に低値であることを報告した。平成28年度は漿液性腺がん57例をCD3,CD4,CD8,FOXP3免疫組織染色を実施し、OCCCとの比較を行った。漿液性腺がんCD3,CD4,CD8,FOXP3浸潤数は大腸がん等と同等であり、卵巣がんでもOCCCのみが低値で有ることが示され、他の癌種と異なりHNF-1β昂進によりIL6高値の免疫抑制環境が既に構築されているためと考えられた。平成27年度までに、OCCCにおいてHNF-1βを抑制すると、NF-kBやSTAT3の活性が抑制されることによりIL-6の産生が抑制され、さらにDCが活性化されT細胞刺激能も増強することが明らかになり、HNF-1βはOCCCの癌免疫抑制環境に関与するとともに、それを解除する標的分子となる可能性が示され、OCCC細胞株を用いてIL6を指標にスクリーニング系を確立した。平成28年度は既存薬ライブラリーを用いてIL6産生と細胞増殖能を指標によりスクリーニングを2種のOCCC細胞株を用いて実施し、細胞増殖能に影響なくIL6産生能を減少させる薬剤12種を同定された。これらは5種の薬剤に分類することが出来た。この中にはHNF-1β下流のNF-kB阻害薬として報告されている薬剤もあった。これら薬剤の中にはHNF-1βを阻害する薬物が含まれている可能性がある。今後、これら薬剤の中からHNF-1βを抑制させる薬剤の選択を行う。
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