研究課題
子宮体癌においてリンパ節転移は重要な予後因子であるが、術前の確実なリンパ節診断法は未確立である。再発低リスク群と思われる症例においてもリンパ節転移が稀に存在するため、診断目的にリンパ節郭清術を実施せざるを得ない。その結果、過剰なリンパ郭清は患者の術後QOLを著しく低下させる。CAGE(Cap analysis of gene expression)法は、RNAの5'端の配列を網羅的に補足し、転写開始点ごとの発現解析が可能な方法である。この方法を用いて未知遺伝子を含めた遺伝子発現をゲノム全域で測定し、リンパ節転移診断を可能とするマーカーの同定を試みた。(方法)倫理委員会承認後、115例の子宮体癌組織を収集した。筋層浸潤1/2以下の子宮内膜癌G1でリンパ節転移陰性(LN-)10例と陽性(LN+)5例に対してCAGE法でLN-/LN+の識別に有効な候補遺伝子群を抽出した。これら候補を115症例に対してqRT-PCRで検証した。(結果)最も診断精度の高いバイオマーカーとしてSEMA3Dと新規転写開始点を有するTACC2アイソフォーム(novel TACC2)を同定した。SEMA3DはLN転移陰性群で高発現し(P<0.001)、novel TACC2はLN転移陽性群で高発現であった(P<0.05)。これら2遺伝子の発現量差は、非常に高いリンパ節転移識別能を認めた(AUC = 0.929)。これら2つを組み合わせることでリンパ節転移を高精度に検出した。(結論)リンパ節転移診断マーカーとしてSEMA3D、novel TACC2を同定した。このリンパ節転移診断法は、原発巣の遺伝子発現定量に基づく診断法であり、転移リンパ節を同定する他の診断法とは一線を画す新しい手法である。今後このマーカーを利用した個別化術式を実現する術前リンパ節転移診断の確立を目指したい。
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Sci Rep.
巻: 26 ページ: 14160
10.1038/s41598-017-14418-5.