microRNA(miRNA)の発現パターンは、がんを含む種々の疾患においてダイナミックに変化するが、診断・治療に関するバイオマーカーとしても有望視されている。卵巣癌においては、漿液性癌や類内膜癌に有用な腫瘍マーカーとして血清中CA125値があるが、その早期には上昇しないことが多い。本研究では、有用な腫 瘍マーカーの存在しない卵巣明細胞癌の早期診断を可能とするような血清中 miRNAの探索・同定を行った。卵巣明細胞癌患者における循環血液中のmiRNAを網羅的に解析し、発現量が大きく変化しているmiRNA(miR-146a、miR-191、miR-484およびmiR-574-3p)を同定した。これらと進行期・予後・治療に対する奏効性および組織型などとの相関性を調べ、末梢循環miRNAの臨床的意義を検討した。 これらmiRNAの候補標的遺伝子をin silico解析により検索した。3’-UTRを含む候補標的遺伝子配列をルシフェラーゼコンストラクトに組み込み、卵巣明細胞癌細胞株を用いてmiRNA強制発現系でルシフェラーゼアッセイを行い、ルシフェラーゼ活性を調べた。また、変異を挿入した候補標的遺伝子配列を組み込んだルシフェラーゼコンストラクトを作製し、ネガティブコントロールとしてのルシフェラーゼアッセイを行った。そして、miRNA強制発現系における候補標的遺伝子のmRNAレベルの発現をrealtime RT-PCR法にて、タンパクレベルの発現をwestern blot法にて確認した。miRNAとその候補標的遺伝子の機能解析を行い、卵巣明細胞癌におけるmiRNAの発現の意義を検討することにより、テーラーメード医療等新規治療法の開発の端緒としたい。
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