研究課題/領域番号 |
15K10734
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
千島 史尚 日本大学, 医学部, 准教授 (50277414)
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研究分担者 |
山本 樹生 日本大学, 医学部, 客員教授 (40167721)
椙田 賢司 日本大学, 医学部, 助教 (30386031)
林 忠佑 日本大学, 医学部, 助教 (70625417)
市川 剛 日本大学, 医学部, 助教 (80599994)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子宮腺筋症 / アンギオテンシン / プロスタグランディン / Angiotensin II receptor / MAS1 / qPCR / immunohistochemistry |
研究実績の概要 |
子宮腺筋症は、子宮内膜あるいはその類似細胞が子宮筋層内に生着・増殖する疾患である。我が国の晩婚化、晩産化により子宮腺筋症の好発年齢においても妊孕性の温存が必要となるケースが見受けられる。薬物療法としては、プロスタグランディン(PG)合成酵素阻害剤のほか、GnRH agonist, proestogens, progsterone含有IUD、Low dose estrogen-progesterone(LEP)製剤などが用いられているが、満足のいく治療法は確立されていない。今後妊孕性を低下させずに、副作用が少なく、長期投与が可能な薬剤の開発が望まれる。新たな治療法の確立を目指し、子宮腺筋症の発症と進展と、アンギオテンシン系とPG合成系のかかわりを解明するため研究を進めている。 子宮腺筋症に関しては、検体を集積中である。子宮腺筋症を伴わない手術検体の子宮内膜、子宮内膜症においてはAngiotensin receptor(AT1, AT2)発現についてmRNAおよび蛋白の産生を確認した。腺筋症に関しては、症例数は少ないが、AT1, AT2蛋白の局在を確認した。子宮内膜症病巣のAT1 receptor mRNA発現およびAT1/AT2 receptor 発現比が非子宮内膜症性患者の増殖期子宮内膜に比較して有意に高値であったことから、レニンアンジオテンシン系が子宮内膜症の病態に関連し、特にAT1/ T2 の比率が関連する可能性が示唆された。 腺筋症におけるangiotensin(AnG)-(1-7)及びMas receptorは、未検討であるが、 内膜症性嚢胞壁は非子宮内膜症患者の増殖期正所性内膜と比較してMAS1 mRNAの発現が有意に増加していた。一方で内膜症性嚢胞壁ではMAS1 mRNAとAT1R mRNAに相関を示したが非子宮内膜症患者の正所性内膜と比較して相関は弱かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの計画では、平成27年度に子宮腺筋症におけるAngiotensinogen、Angiotensin converting enzyme(ACE)、angiotensin 1(AT1)、angiotensin 2(AT2) receptor、mPGES-1、COX2 mRNA発現の検討、これらのmRNAの局在をIn situ hybridization(ISH)にて解析し、更にこれらの知見をもとに、平成28年度は、子宮腺筋症患者の検体より子宮腺筋症間質細胞(ASC)を分離し、estradiol(E2)を添加し初代培養し、培養細胞にestradiol(E2), angiotensinⅡ拮抗薬losartanを添加し、MTT assayにより増殖能に変化があるかを検討しAngiotensinogen、Angiotensin converting enzyme(ACE)、angiotensin 1(AT1)、angiotnsis 2(AT2) receptor、mPGES-1、COX2の生物学的意義の検討する予定であったが、前年と同様、GnRH agonistなどのホルモン療法を施行していたり、患者年齢が生殖年齢をはずれるものが多いため、研究の対象となる子宮腺筋症症例が少なく、現在症例を集積中である。 腺筋症におけるangiotensin(AnG)-(1-7)及びMas receptorに関しては、未検討であるが、 内膜症性嚢胞壁は非子宮内膜症患者の増殖期正所性内膜と比較してMAS1 mRNAの発現が有意に増加していた。一方で内膜症性嚢胞壁ではMAS1 mRNAとAT1R mRNAに相関を示したが非子宮内膜症患者の正所性内膜と比較して相関は弱かった。MAS1/AT1 mRNA 比では非子宮内膜症患者の正所性内膜と比較して、子宮内膜症患者の正所性内膜で有意に増加していた。
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今後の研究の推進方策 |
術前にGnRH agonistなどのホルモン療法がなく、生殖年齢における子宮腺筋症の症例の集積が緊急の課題である。GnRH agonistなどのホルモン療法を施行した症例の検体の利用に関し、新たな臨床研究を計画し倫理委員会の承認をえることも視野に入れる必要もあると思われる。腺筋症病巣切除に関する臨床研究を倫理委員会に提出し承認得られれば行うことも視野に入れたい。 平成29年度の研究計画は、子宮腺筋症患者の検体より子宮腺筋症間質細胞(ASC)を分離し、estradiol(E2)を添加し初代培養し、培養細胞にestradiol(E2), angiotensinⅡ拮抗薬losartanを添加し、Angiotensinogen、Angiotensin converting enzyme(ACE)、angiotensin 1(AT1)、angiotnsis 2(AT2) receptor、NF-kB 、mPGES-1、COX2発現に与える影響をBio-Plex、 Multiplex Systemにて解析する予定である。平成29年度は、子宮腺筋症の症例の集積とこれらの、培養実験をある程度、同時進行させる必要がある。angiotensin 1-7のreceptorであるMAS1を子宮腺筋症において検討することも視野に入れたい。また、neonate mouse modelとして知られるCD-1マウスを用いた実験も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の計画では、子宮腺筋症患者の検体より子宮腺筋症間質細胞(ASC)を分離し、estradiol(E2)を添加し初代培養し、培養細胞にE2, angiotensinⅡ拮抗薬losartanを添加し、MTT assayにより増殖能に変化があるかを検討しAngiotensinogen、Angiotensin converting enzyme(ACE)、angiotensin 1(AT1)、angiotnsis 2(AT2) receptor、mPGES-1、COX2の生物学的意義の検討する予定であったが、術前にGnRH agonistなどのホルモン療法を施行していたり、患者年齢が生殖年齢をはずれるものが多いため、子宮腺筋症症例が少なく、これらの実験を行えなかった。培養試薬、angiotensin Ⅱ拮抗薬、定量的PCR試薬、Bioplax試薬、免疫組織試薬をすべて購入していなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度において、平成28年度に使用しなかった、残額で培養試薬、angiotensin Ⅱ拮抗薬、定量的PCR試薬、Bioplax試薬、免疫組織試薬を購入し、子宮腺筋症患者の検体より子宮腺筋症間質細胞(ASC)を分離し、estradiol(E2)を添加し初代培養し、培養細胞にestradiol(E2), angiotensinⅡ拮抗薬losartanを添加し、MTT assayにより増殖能に変化があるかを検討しAngiotensinogen、Angiotensin converting enzyme(ACE)、angiotensin 1(AT1)、angiotnsis 2(AT2) receptor、mPGES-1、COX2の生物学的意義の検討する予定である。更にSD-1マウスを購入し、動物実験も開始する。
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