研究課題
子宮腺筋症のため子宮摘出術を行う症例がその後も得られず、代替研究として、内膜症性嚢胞壁におけるangiotensin-(1-7)及びMas receptorに関する研究を進めた。AngII がangiotensin-converting-enzyme type2 (ACE2)により切り出されたAngiotensin-(1-7)は、その特異的受容体であるMAS1を介して血管拡張、細胞増殖抑制、抗炎症作用を持ち、AT1Rと拮抗する作用を有する。子宮内膜症性嚢胞の症例数は29症例に増やして検討した。コントロールは、子宮内膜症を持たない婦人科患者の正所性子宮内膜を用いた。MAS1,AT1 and AT2に対し免疫組織染色を行い、mRNAレベルはRT-PCRにて検討した。内膜症性嚢胞壁における免疫組織染色では、MAS1は子宮内膜腺上皮細胞に染色された。内膜症性嚢胞壁におけるMAS1 mRNAの発現は、月経周期に拘わらず上昇していた。また、内膜症患者の増殖期におけるMAS1 mRNAは、非子宮内膜症患者の増殖期正所性内膜と比較し、有意に増加していた。MAS1/AT1 mRNA 比では非子宮 内膜症患者の正所性内膜と比較して、子宮内膜症患者の正所性内膜で有意に増加していた。一方で内膜症性嚢胞壁ではMAS1 mRNAとAT1R mRNAに相関を示したが非子宮内膜症患者の正所性内膜と比較して相関は弱かった。この正所性内膜におけるMAS1/AT1 mRNA 比の増加が子宮内膜リモデリングに影響を与え子宮内膜組織が異所性に増殖する原因となっている可能性が考えられた。子宮内膜症患者における正所性子宮内膜の微小環境の変化にレニン‐アンジオテンシン系が関与していることが示唆された。
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Gynecol Obstet Invest
巻: 83 ページ: 600-607
10.1159/000490561