研究課題/領域番号 |
15K10735
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
彭 為霞 日本医科大学, 医学部, 講師 (00535700)
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研究分担者 |
内藤 善哉 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (20237184)
和田 龍一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20260408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 類内膜腺癌 / 網羅的な蛋白質解析 / プロテオーム解析 / 予後 |
研究実績の概要 |
類内膜腺癌(endometrial endometrioid carcinoma; EEC)は比較的に予後良好とされているが、中では、明らかな予後不良である症例は2割程度を占めることが報告されている。しかし、EECの悪性度の評価及び予後予測に有用マーカーはまだ確立されていない。本研究は、網羅的な蛋白質解析および免疫組織化学法により、EECの悪性度評価及び予後予測に有用なバイオマーカーについて検討した。
EEC組織(G1~G3)のホルマリン固定、パラフィン包埋組織を用いて、LC/MS/MS法(Liquid Chromatography - tandem Mass Spectrometry;液体クロマトグラフィー質量分析法)プロテオーム解析から網羅的に蛋白質解析を行った。半定量比較解析法により、ぞれぞれのSI(スペクトラルインデックス)やNSAF(相対発現量)、Rsc (相対変化量)を算出した。検索したすべての症例において発現を確認できた蛋白質の中、とりわけ予後不良とされている低分化(G3)EECにおける高発現を認める17種類の蛋白質を同定した。その中、癌細胞の増殖や浸潤に関与する蛋白Aを注目し、手術材料の組織検体および Tissue microarrayを用い、さらに検討した。
その結果、それぞれ 9%のG1 EEC、37%のG2 EEC、69%のG3 EECにおいて、蛋白Aの高発現を確認できた。蛋白A高発現群と低発現群における患者年齢、腫瘍の組織学分化度、脈管侵襲の有無、再発の有無、病期を比較した結果、蛋白A発現の高低は、患者年齢、病期分類と有意な相関は見られなかったが、G3 EECには蛋白Aの発現は有意に高かった(p<0.05)。また、明らかな統計学的な相関性は見られなかったが、癌の再発およびリンパ管侵襲を示す症例において、蛋白A高発現の傾向が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回網羅的な蛋白質解析および免疫組織化学の検討で、予後不良とされている低分化(G3)類内膜腺癌(EEC)において特異的に高発現を示す蛋白Aが同定できた。蛋白Aは、EECの癌進展や予後との関連性についてはほとんど検討されてないが、ほかの癌腫において、癌の進展や予後不良に関与することが報告されている。また、明らかな統計学的な相関性は見られなかったが、癌の再発およびリンパ管侵襲を示す症例において、蛋白A高発現の傾向が見られた。
今回検討した結果より、蛋白Aは、EECの脱分化や癌の進展、再発、予後に関与する可能性が高いと推測でき、EECの悪性度評価及び予後予測に新たなバイオマーカーになる可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
手術治癒切除を受けた患者の症例を増やし、蛋白Aの発現パターンを確認する。また、患者のOverall Survival(全生存期間)および Disease-Free Survival(無病生存期間)を調査し、蛋白Aの発現と比較する。これより、蛋白Aは子宮類内膜腺癌(EEC)の悪性度及び予後予測予測因子としての可能性について検討する。特に、脱分化傾向を示す症例、著明な脈管侵襲を示す症例を注目し、蛋白A高発現の有無を確認する。さらに、化学療法抵抗性を示す症例における蛋白Aの発現の有無、発現パターンを検討し、蛋白Aの発現は治療効果との関連性についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度で行う予定だった研究備品の一部補充、修理は次年度に変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究試薬の購入や研究備品の補充、修理に使う予定である。
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