内側前庭神経核は水平性眼球運動の中枢として機能してる。一過性循環障害、すなわち虚血による内側前庭神経核の機能不全は、構成素子であるニューロンの機能不全の統合情報である。一方、セレスタミンは中枢神経系において、不安や情動などをコントロールしている。内側前庭神経核にも、セレスタミン受容体は存在し、ニューロンの発火特性に影響を与えている。虚血時の内側前庭神経核にセレスタミンの与える影響を電気生理学的側面から解析検討を行うことが本研究の目的である。 昨年までは、虚血負荷が安定せずセレスタミン投与後のニューロンの自発発火様式が解析に値しないことがしばしばあった。今年度は細胞外液のグルコース濃度を変化させることで、虚血→セレスタミン投与後の記録が安定しデータを解析することができた。一過性虚血により、内側前庭神経核ニューロンは自発発火を停止するが、約半数(56%)のニューロンではセロトニンを投与しても自発発火は回復しないままであった。一方、残りの43%のニューロンではセロトニン投与により自発発火の回復がみられた。回復した自発発火の頻度は、虚血前より高くなった。このことは、一定数の内側前庭神経核ニューロンはセロトニンにより修飾をうけ、眼球運動系の入出力に変調を与える可能性があることが確認できた。また、セロトニン受容体の一つである5-HT1A受容体に対するアゴニストの8-OH-DPATを虚血時の前庭神経核ニューロンに投与しても、虚血により自発発火を休止した自発発火が回復するものがみられた。
|