研究課題
本研究は、蝸牛感覚上皮細胞内のミトコンドリアおよび蝸牛聴覚神経系のin situ直接イメージング法を確立し、詳細な解剖学的分布地図を作製、これをもとに感音難聴の本態解明・新たな治療法の開発につなげるための研究基盤を確立することが目的である。具体的に本研究期間内に計画している研究項目は次のものである。①ミトコンドリアGFP-トランスジェニックマウス(mtGFP-Tg)を用いた、蝸牛における細胞内ミトコンドリア分布の高解像度3次元解析・経時的観察 ②神経細胞マルチカラー蛍光発色マウスを用いた蝸牛神経繊維の詳細なマッピング ③ ①②を応用し、耳毒性薬剤投与後など難聴モデル動物でのミトコンドリア分布・神経支配の解明、障害からの回復過程における再分布の解析、さらに種々の抗酸化剤・神経保護薬剤投与による予防・治療効果を測定し作用機序を解明本年度は、①mtGFP-Tgマウスを用いた、正常蝸牛組織内でのミトコンドリア分布の3次元観察 ②正常ラセン神経系の3次元観察を行った。①ではマウス蝸牛体外培養と共焦点顕微鏡を用いた実験系により、蝸牛有毛細胞ミトコンドリアの全体的な発生課程を可視化した。生後3日(P3)マウスの蝸牛組織の体外培養を行ったのちにイメージング、三次元再構築してミトコンドリアの挙動を可視化した。有毛細胞の識別にはMyosin VIIa抗体染色を使用した。さらに、蝸牛透明化手法を利用し、生後11日(P11)、成体(P70)マウスでもミトコンドリア分布の三次元観察を行った。聴覚獲得前であるP11では有毛細胞マーカーであるMyosin7aとGFPは共局在するのに対してP70マウスでは局在が異なる興味深い結果となった。②では神経細胞をThy-1プロモーターで可視化したThy1-GFPマウス(単色マウス)を使用し、ラセン神経系の3次元観察を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、蝸牛感覚上皮細胞内のミトコンドリアおよび蝸牛聴覚神経系のin situ直接イメージング法を確立し、これをもとに感音難聴の本態解明・新たな治療法の開発につなげるための研究基盤を確立することであった。本年度の計画では①mtGFP-Tgマウスを用いた、正常蝸牛組織内でのミトコンドリア分布の3次元観察および②正常ラセン神経系の3次元観察を予定していた。①に関しては概ね順調に進展しているが、②についてはマルチカラー蛍光発色マウスの輸入にトラブルが発生したため多少の遅れが生じている。
①ミトコンドリア機能障害マウスでのミトコンドリア分布、活性酸素発生の観察生体蝸牛イメージング技術を進化させ、高解像度でのミトコンドリアの挙動を可視化する。②神経障害モデルでのラセン神経系の3次元観察マルチカラー蛍光発色マウスをフランスより入手し、蝸牛を採取して断層撮影~3次元再構築の手法を用いてラセン神経の周波数マッピングを行う。また、神経障害モデルでのラセン神経系の3次元再構築を行う。
マルチカラー蛍光発色マウスの輸入に遅れが生じているため。
マルチカラー蛍光発色マウスの輸入に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Sci Rep
巻: 6 ページ: 35361
10.1038/srep35361.
Neurotox Res
巻: 30 ページ: 213-24
10.1007/s12640-016-9617-5