研究課題
先天性感音難聴においては、遺伝子上のひとつの塩基ないしは数塩基の、点変異、欠失や挿入による変異が原因となる。近年、これに加えて、コピー数変化(CNV: copy number variation)といわれる、より大きな規模での遺伝子の重複や欠失が、難聴の原因となることが明らかになりつつある。しかしながら、CNVを網羅的に複数の候補遺伝子から検出することは容易ではない。CNVの検出はサンガーシークエンスではほぼ不可能であり、また次世代シークエンサーを用いた場合であっても、解析手法の制限があるため、検出力において確実性に劣る。そこで、本年度はaCGH(比較ゲノムハイブリダイゼーション法)を利用したマイクロアレイを新たに設計、デザインし、検討を行った。具体的には既知難聴原因遺伝子領域を密にカバーするDNAマイクロアレイをカスタム設計を行った。また、次世代シークエンス解析を行った日本人難聴患者90名のデータからCNV候補の検出された16例を対象に、複数の難聴遺伝子におけるCNVに対して、本CGHアレイを用いた検討を行った結果、実際にCNVを有することを確認することができ、CNVの網羅的検討にaCGH法が有用であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
保険診療で行われている先天性難聴の遺伝学的検査と同様の、次世代シークエンサー解析結果からCNVの検出を行った。また、次世代シークエンサー法で検出されたCNV候補を対象にアレイCGHを用いた確認を行った結果、aCGH法によりCNVを網羅的に検出可能であることを明らかにすることができており、順調に進展している。
本年度の検討により、保険診療で行われている先天性難聴の遺伝学的検査と同様の、次世代シークエンサー解析結果から、CNVの検出が可能であるものの、適切なパラメーターの設定が困難であり不正確な部分があることが明らかとなった。今後、さらに各種パラメーターを調整し、より正確なCNV検出のための要因を明らかにするとともに、結果をアレイCGHの結果と照合することで、ブラッシュアップするとともに、より多くの症例で検討を行う計画である。また、CNVの見出された症例の難聴の特徴と、CNVの状態、すなわち遺伝子の欠失のサイズや位置などの比較を行うことで、変化の種類と臨床像を推定する基盤情報を構築する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Annals of Otology, Rhinology & Laryngology
巻: 125 ページ: 918-923
10.1177/0003489416661345