研究実績の概要 |
コピー数変化(CNV: copy number variation)といわれる、数千ないしは数Mbの大きな規模での遺伝子の重複や欠失が、先天性感音難聴の遺伝学的な原因のひとつとして注目されている。難聴の遺伝学的検査として、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析が、すでに保険診療で実施されており、このCNV解析を加えることで、その診断率向上に寄与できると考える。本研究期間において、現在報告されている難聴遺伝子の情報を網羅した、CGH(比較ゲノムハイブリダイゼーション法)アレイを設計、予備的な検討を行った。複数の難聴遺伝子におけるCNVに対して、本CGHアレイを用いた検討を行った結果、正確にCNVを確認することができた。次いで、現在保険診療で行われている先天性難聴の遺伝学的検査と同様の、次世代シークエンサー解析結果から、コンピューターによるCNVの検出を行った(in silico解析)。この結果をCGHアレイで確認し、次世代シークエンサーを用いたCNV解析の手法がある程度確立できた。およそ1,000人の難聴者の遺伝子解析結果から、CNV解析を行い、複数の難聴遺伝子において、難聴の原因と考えられる遺伝子コピー数異常を検出、CGHアレイで確認を行った。これにより、複数の遺伝子において、コピー数変化が確認され、いずれも日本人難聴家系において初めて見出されたものであった。また、難聴の原因遺伝子のひとつである、STRC遺伝子において、多数のCNVを見出すことに成功し、それらは全て中等度難聴を示すことが明らかとなった。1,025名の難聴者の解析から、中等度難聴の原因として、2番目に頻度が高い原因遺伝子であり、それらがCNVによるものであることが明らかとなった。今後、保険診療の難聴遺伝学的検査に、新たにCNV解析を加える重要性が示された。
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