鼓室形成術の成功には伝音効率の良い耳小骨連鎖の再建が不可欠であり、再建材料は各症例に最も適した形状に細かく加工される。しかし、最良に加工された再建材料を用いても鼓膜浅在化や陥凹といった術後に生じる変化により再建材料が脱落、あるいは挿入位置のずれを起こし、聴力低下を生じる症例は少なくない。そこで当該研究では術後変化に対応し得る人工耳小骨の開発を目指し、術後の変化に対応して形状が変わる新たな再建材料を検討することが目的である。当該研究では新たな再建材料として網膜剥離の治療で使用されるlabtician opthalmics社製のシリコンスポンジを用いて検討を行っている。測定はすべて外耳道に80dBの音響負荷を行いアブミ骨底板の振動を測定した。まず、正常な耳小骨連鎖の伝音効率を測定し、その後キヌタ骨を除去後、適切な長さのチタン製人工耳小骨をツチ骨とアブミ骨の間に挿入し0.15mmの暑さのスライドガラスを0、1、2、3枚と順次挿入し各条件で測定した。その結果、挿入したスライドガラスの枚数に応じて底板の振動が低音を中心に減弱していた。続いて暑さ2mmのシリコンスポンジをツチ骨とチタン製人工耳小骨の間に挿入し測定した。シリコンスポンジの伝音効率はチタン製人工耳小骨のみの伝音効率と比べ高音域を中心に低下していた。そこでスポンジの大きさによる伝音効率を確認する目的に、ツチ骨とアブミ骨の間に厚さが2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mmのシリコンスポンジを挿入し伝音効率を測定した。厚さが2.5mmのシリコンスポンジでは0.5kHzから2kHzにかけて正常な耳小骨連らの伝音効率に近づいたが全体的に伝音効率は低下しており、厚さが増すほど伝音効率は低下していた。このことよりlabtician opthalmics社製のシリコンスポンジよりも柔らかいスポンジが必要であると考えられた。
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