研究課題/領域番号 |
15K10756
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小森 正博 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (30565742)
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研究分担者 |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00190439)
内山 淳平 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20574619)
小林 泰輔 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (30253313)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRSA / ファージ療法 |
研究実績の概要 |
2014年の3学会合同抗菌薬感受性サーベイランスでは、慢性中耳炎の50%が重症例であること、重症化に伴い黄色ブドウ球菌の比率が増加し重症例の47%(うちMRSA 32%)を占めることが報告されている。日常診療では、MRSA感染にて保存的治療に抵抗し、外科的治療を行っても感染の制御が困難な症例がしばしば経験される。当科のMRSA菌株において、55%にバンコマイシンの、45%にリネゾイドのMIC値が境界値にあることが明らかされた。このことから薬剤耐性の進行が危惧された。また、患者の高齢化に伴う腎機能の低下から抗MRSA薬の使用を憂慮する症例が増えている。そこで、細菌の天敵バクテリオファージ(ファージ)を用いたファージ療法に着目した。ファージは細菌のみに特異的に感染し、これを破壊するウイルスである。それぞれの宿主菌に特異的なファージが存在し、常在細菌叢やヒトの細胞には感染しない。よって、宿主菌が死滅すればファージも死滅する。さらに、薬剤耐性の影響は受けず、バイオフィルムも破壊するとされる。一方、薬剤耐性遺伝子を運ぶファージが存在することや、O-157のようにそれに感染していたファージが毒素を出して病原性を示すことが明らかとなり、治療に最適で安全なファージを選別することが必須となった。我々はゲノム解析にて安全性が確認できた黄色ブドウ球菌ならびに緑膿菌に対するファージを保有している。そして、マウス肺炎ならびに敗血症モデルにて腹腔内投与の、マウス角膜炎モデルにて局所投与の有用性を報告した。本研究でもマウスを用いる。まず、マウスの蝸牛機能をABRにて評価する手技を安定させた。現在、マウス中耳炎モデルを確立するために、局所感染を成立させるために投与する細菌の濃度と感染成立後にファージを投与するまでの時間について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
局所感染を成立させるために投与する黄色ブドウ球菌、緑膿菌の至適濃度と、感染成立後にそれぞの細菌に対応したファージを投与するまでの至適時間について検討している。
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今後の研究の推進方策 |
黄色ブドウ球菌、緑膿菌をマウスの中耳腔に注入して中耳炎を生じさせる。鼓膜所見を記録し、エンドポインにおいて内耳、中耳の組織学的評価と内耳機能の評価を行う。同様に、黄色ブドウ球菌、緑膿菌をマウスの中耳腔に注入して中耳炎を生じさせ後、ファージを投与した群においても、鼓膜所見を記録し、エンドポインにおいて内耳、中耳の組織学的評価と内耳機能の評価を行う。主にこの2群を比較して検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細菌の至適濃度、ファージ投与までの至適時間の検討に時間を要しており、その後に行う中耳内の残存細菌数やサイトカインの検討のための費用を次年度に持越した。
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次年度使用額の使用計画 |
至適濃度と時間が決まると感染が生じた後の組織学的検討が進められるので、繰り越した助成金を使用する。
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