研究課題
2014年3学会合同抗菌薬感受性サーベイランスでは、慢性中耳炎は50%が重症例であり、重症化に伴い黄色ブドウ球菌の比率が増加し、重症例の47%(うちMRSA 32%)を占めた。日常診療において、MRSA感染にて保存的治療に抵抗し、外科的治療を行っても感染の制御が困難な症例をしばしば経験する。最近の当科の検討では、バンコマイシンの55%(6/11)、リネゾイドの45%(5/11)にMIC値が感受性判定の境界値にあり、薬剤耐性化の進行を危惧している。また、患者の高齢化に伴う腎機能の低下から抗MRSA薬の使用を憂慮する症例が増えている。よって、既存の抗菌薬に代わる新たな治療法の開発も必要であると考えた。そこで、新しい治療法の可能性をみて、昔からある自然由来の細菌の天敵バクテリオファージ(ファージ;細菌ウイルス)を用いたファージ療法に着目した。ファージは細菌のみに特異的に感染し、これを破壊するウイルスである。それぞれの宿主菌に特異的なファージが存在し、常在細菌叢やヒトの細胞には感染しない。よって、宿主菌が死滅すればファージも死滅する。また、薬剤耐性の影響は受けず、バイオフィルムも破壊するとされる。ゲノム解析にて安全性が確認できた黄色ブドウ球菌ならびに緑膿菌のファージを見出し、マウス肺炎ならびに敗血症モデルにて腹腔内投与の、マウス角膜炎モデルにて局所投与の有用性を報告した。さらに、黄色ブドウ球菌を経外耳道的に鼓室内に注入して中耳炎モデルマウスを作成した。そして、投与量の至適濃度を定める予備実験から、黄色ブドウ球菌の投与量は1.9x1010cells/microlitterとした。ファージの種類と投与量はタイプS13を用いて、1.2x1012cells/microlitterとした。PBSをコントロールとして、ファージの有効性を示した。
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Methods in Molecular Biology
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Journal of General Virology
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