研究課題
近年、急性中耳炎をはじめ非侵襲性の上気道感染症から経口抗菌薬治療に十分に反応しない薬剤耐性難治性中耳炎あるいは急性乳様突起炎に進展する症例が増加しており臨床的に大きな問題となっている。肺炎球菌は局所の環境に適応し莢膜を変化させる。これをPhase Variationという。この変化による肺炎球菌の形態は莢膜の薄いTransparent型と莢膜が厚いOpaque型の2つに分類されている。Transparent型は、上皮細胞に付着する際に有利であり、Opaque型は補体結合性が低く、貪食処理に抵抗し,組織内で長期に存在することで重症感染症を引きおこすためOpaque型の方が病原性が高いと報告されている。本研究では、肺炎球菌の病原因子の中で重要な莢膜多糖体に注目し、肺炎球菌のPhase Variationにより宿主防御機構を巧妙に逃避し、鼻咽腔に定着し、保菌されるメカニズムを解明するとともに、抗菌薬による莢膜の変化を検討した.Todd-Hewitt+Yeast extract (THY)培養液で肺炎球菌をOD600nm=0.5まで前培養し10倍希釈した後に,1/32MICのクラリスロマイシン添加THY培養液にて再度OD600nm=0.5となるまで増殖させ、コロニー数,透過型株の比率を検討し、また莢膜多糖体量は6B型に対するモノクローナル抗体を用いてinhibitionELISA法により定量評価した。クラリスロマイシンは肺炎球菌のTransparent型からOpaque型への変化を抑制しTransparent型を誘導することが浮遊菌でも細胞付着菌でも同様の結果が得られた。