研究課題
近年、難治性中耳炎の一つとしてANCA関連血管炎性中耳炎の存在が明らかになった。好酸球性中耳炎とあわせてこれらの多くの症例では急激な骨導閾値の上昇を伴う感音難聴が引き起こされることがあり治療に抵抗性である。感音難聴は炎症や感染などの因子、血管炎などの因子が複雑に関連して引き起こされると考えられているが、その病態の多くはまだ解明されていない。ANCA関連血管炎性中耳炎の病態解明のため、1)血管炎モデルラットにおける中耳、内耳の組織学的検討 2)ANCA関連血管炎性モデル動物作成を引き続き行った。血管炎モデルラットについて中耳、内耳の炎症細胞浸潤、内耳炎を生じている可能性について免疫組織学的に検討した。 さらに既に報告されているANCA関連血管炎モデルラット作成に準じて、最も聴力の安定しているCBA/Jマウスに抗甲状腺薬Propylthiouracil(PTU)とphorbolmyristate acetate(PMA)の投与を行った。マウスにラット体重比を参考に換算した薬物量の投与、および血清の分離、ANCA抗体価の測定を行ったが薬物量を十分に摂取することが困難で安定したANCA関連中耳炎モデル誘導には現時点では至っていない。そこで、ほかの系統のマウスでの誘導の差異を検討する必要があると考えられ、MPO-ANCA上昇マウス(Kusunoki Y et al. Frontiers in Immunology 2016)を参考にBALB/c、B6/Jなど他の系でのMPO-ANCA上昇の見られたANCA関連血管炎モデルマウスによる中耳炎の誘導の有無についての検討を考えている。
3: やや遅れている
ANCA関連血管炎性中耳炎の病態解明のためANCA関連血管炎性モデル動物作成を引き続き行った。既知のANCA関連血管炎モデルラット作成に準じて、最も聴力の安定しているCBA/Jマウスに抗甲状腺薬Propylthiouracil(PTU)とphorbol myristate acetate(PMA)の投与を行った。マウスにラット体重比を参考に換算した薬物量の投与、および血清の分離、ANCA抗体価の測定を行ったが安定したANCA関連中耳炎モデル誘導には至らなかった。そこでほかの系統のマウスでの誘導をはかるべくMPO-ANCA高値マウス(Kusunoki Y et al. Frontiers in Immunology 2016)を参考にBALB/c、B6/J、B6/N、NZW系でのANCA関連血管炎モデルマウスによる中耳炎の誘導を検討中である。一方で、血管炎モデル動物においても中耳、内耳に炎症性変化を検討した。ホルマリン固定の状態、および動物種差による頭蓋骨の組織条件を見ながら中耳、内耳の組織を作成し血管炎の有無、中耳、内耳の炎症細胞浸潤の検討を行った。
聴覚計測、機序の研究には個体差の少ないマウスモデルが有用である。現時点では、マウスは、ラットに比べて同じプロトコール条件でのANCA関連血管炎誘導が難しい。CBA/Jマウスは聴覚の長期的な聴力経過の報告があり有用であるが、MPO-ANCA誘導にはマウスの系による種差がラットよりも大きいと考えられるため、さらに様々なマウスの系を用いることにより明らかにしたいと考えている。一方、ANCA関連血管炎性中耳炎はヒトではMPO-ANCA陽性が多く、滲出性中耳炎と類似した漿液性の中耳貯留液を認める。この中耳貯留液中のANCA濃度および、ケモタキティックファクターの検討を行うとともに、ANCA関連血管炎性中耳炎を生ずる好酸球性多発血管炎生肉芽腫症(EGPA)やMPO-ANCA陽性のANCA関連血管炎性中耳炎と免疫抑制薬使用前後におけるモデル動物実験に有用なアイデアとなる差異を検討する。
ANCA関連血管炎モデル動物の作成、および組織学的検討が動物種の差異により進捗がやや遅れ、聴力、生化学解析のための設備備品を次年度に使用することになった。
次年度は、動物代および免疫組織の抗体などの消耗品、ANCA測定のための費用、ケモタキティックファクター測定のための試薬代、聴力測定のための測定機器代として使用したい。
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Modern Rheumatology
巻: 27 ページ: 87-94
ENTONI
巻: 205 ページ: 12-18