研究課題/領域番号 |
15K10759
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉田 尚弘 自治医科大学, 医学部, 教授 (90291260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ANCA関連血管炎 / 難治性中耳炎 / MPO-ANCA / 感音難聴 |
研究実績の概要 |
ANCA関連血管炎性中耳炎のモデル動物として、1)血管炎モデルラットにおける中耳、内耳の組織学的検討を行った。ラットの内耳骨胞の脱灰に時間を要したが、組織を確認したところ、明らかな血管炎所見は内耳には認められなかった。2)ANCA関連血管炎性中耳炎モデルマウスの作成を行った。聴覚系の聴力像が良く検討されているCBA/Jマウスでは、抗甲状腺薬Propylthiouracil (PTU)及びphorbol myristate acetate (PMA)の投与によりMPO-ANCAが産生されにくかった。他の系であるBALB/C,B6/J、NZW系を用いてMPO-ANCA上昇マウス(Kusunoki et al. Frontiers in Immunology 2016)を参考にモデルマウスの作成、及び内耳、中耳における血管炎の組織学的変化を検討した。現時点では、MPO-ANCAの軽度上昇は認められるが、中耳腔には明らかな粘膜の腫脹、貯留液は認められず、血管条、コルチ器などには著明な炎症細胞浸潤も認められていない。微小血管の状態については現有の光学・画像解析機器の精度の問題からまだ十分には検討できていない。ANCA関連血管炎性中耳炎症例では、鼓膜、外耳道の血管怒張、炎症、肉芽形成が初発症状でみられることもある。今後、ANCA関連血管炎性中耳炎臨床症例の臨床像の解析も行いその結果を参考にしながら、さらにモデルマウス作成方法を改良して充分量のANCA上昇を誘導、鼓膜、外耳皮膚などの組織学的変化、聴力変化等を、内耳における部位別のNETs、ケモタキティックファクターの発現や形成、さらにその局在と臓器特異性、表現系の違いなどを検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
他の系であるBALB/C,B6/Jの系でMPO-ANCA上昇マウス(Kusunoki et al. Frontiers in Immunology 2016)を参考にモデルマウスの作成、及び内耳、中耳における血管炎の組織学的変化を検討した。適切な条件での内耳、中耳を含む側頭骨の脱灰、標本の作製は可能となったが、現時点では、MPO-ANCAの軽度上昇は認められるが、中耳腔には明らかな粘膜の腫脹は認められず、著明な炎症細胞浸潤は認められていない。内耳、中耳腔に著明な血管炎所見のあるモデルマウス作成方法の改良を行っている段階で研究の遅延を生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒト症例の臨床像の解析も行い、また他系統の動物を参考にして充分量のANCAを誘導するマウスの作成方法の検討や改良を行う。現在のモデル動物を用いて中耳腔、内耳以外の鼓膜、外耳皮膚などのより詳細な組織学的変化を検討したい。可能であれば、内耳における部位別のNETs、ケモタキティックファクターの発現や形成、さらにその局在と臓器特異性、表現系の違いなどを検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ANCA関連血管炎性中耳炎のモデルマウスをCBA/J系からBALB/C,B6/J,B6/N,NZW系などに変えてMPO-ANCA誘導を行ったが、中耳の明らかな組織学的な血管炎誘導所見は現時点ではえられていない。作成中のモデルマウスの組織学的所見がまだ明確でないため、聴力、生化学的解析のための設備備品を次年度に使用することとなった。 次年度は、そのためさらに系の変更や、組織変化、ケモタキテイックファクター検討の変更、臨床像の検討など研究計画の見直しを行い、動物代、免疫組織の抗体などの消耗品、ケモタキティックファクター測定のための試薬代、組織のより詳細な解析のための画像機器代等として使用したい。
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