われわれが行ってきたマウスの実験に基づいて内耳へのさまざまな投与法における薬物動態をわれわれの研究成果と諸家の報告をまとめる。使用したマウスはglial fibrillary acidic protein (GFAP)プロモーターおよびヒトβ-グロビンイントロンの12kbによって制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子発現カセットを有するGFAP-Lucマウスである。これらのマウスの内耳に送達されたルシフェリンは、GFAP発現細胞(らせん神経節が主体)でルシフェラーゼと反応し、得られたシグナルはIVISシステムを用いることでリアルタイムに経時的に測定することが可能となる。このシステムは元来、注入したがん細胞の局在をリアルタイムで計測することに使用されている5)。従来は、内耳に到達した薬を測定する際には動物個体を犠牲死させる必要があったが、本研究システムではその必要がない。われわれの研究における対象はマウスであり、投与薬も治療薬ではないが、ある一定の時間内で、リアルタイムに、かつ経時的に観察が可能であることを可能にしている。 静脈投与量と到達量について 静脈投与量を増やしていくと内耳への到達量が増加する傾向にあった。特に基準量より3倍量を投与すると基準量と比較して3倍量の方が有意差をもって多かった。 内耳への全身投与と局所投与 全身投与のうち、皮下、経口、静脈投与それぞれの投与経路において内耳への到達量は異なっている。静脈投与は皮下投与よりも早く内耳に到達し、ビークに達しやすい6)。経口投与では内耳への到達量は極めて少ない(論文準備中)。局所投与は静脈投与よりも内耳に早く到達する5)。しかしながら内耳到達量のピークはほぼ同じである。
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