研究課題/領域番号 |
15K10770
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
土井 勝美 近畿大学, 医学部, 教授 (40243224)
|
研究分担者 |
日比野 浩 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70314317)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Rho/ROCK pathway / 突発性難聴 / 蝸牛 / 内耳虚血 |
研究実績の概要 |
ROCK inhibitor(塩酸ファスジル)による突発性難聴・内耳虚血に対する新規治療法の確立を目指し、既存治療法である副腎皮質ステロイド単独群、副腎皮質ステロイド+塩酸ファスジル群、そして塩酸ファスジル単独群の3群間で治療成績の比較を行った。塩酸ファスジルの投与は、塩酸ファスジル(商品名:エリル注S)30mgを1日2回(総量60mg)、9日間点滴静注で行った。ステロイド治療は、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(商品名:ソルコーテフもしくはサクシゾン)500mg/日もしくは100mg/日を各3日間ずつ、合計9日間点滴静注で投与した。厚労省難治性疾患克服研究事業(急性高度難聴)に関する調査研究はんの判定基準に従い治療成績の判定を行った。副腎皮質ステロイド+塩酸ファスジル群が、最も優れた治療成績を示した。 人工呼吸器による換気下のモルモット内耳より内リンパ電位を連続的に測定し、同時に蝸牛の外リンパおよび静脈内に塩酸ファスジルの投与を行った。塩酸ファスジル自体の内リンパ電位への影響は観察されず、塩酸ファスジルの内耳投与は安全と推察された。人工呼吸器を停止させることで、内耳虚血を負荷し、同時に蝸牛内に塩酸ファスジルを投与して、内リンパ電位の変化を測定したが、内耳虚血に伴う内リンパ電位の低下に対して、塩酸ファスジルの陽性および陰性の作用は、ともに確認できなかった。分子生物学的研究では、ラット蝸牛内にROCK受容体の発現を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究は、ほぼデータ解析を終了し、解析結果のまとめが行われている。動物実験では、電気生理学的実験は、ほぼ終了した。分子生物学的研究は、現在も進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
分子生物学的研究を遂行する。臨床研究は、症例数をさらに増やすと同時に、投与法(塩酸ファスジルの投与濃度や投与回数など)をさらに変更して、治療効果の違いを検討することで、最適の治療レジメの確立を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究におけるヒト内耳組織の網羅的遺伝子解析・蛋白質解析の実施が遅れており、2018年度も引き続き同解析を継続していく必要が出たのが理由である。動物実験における分子生物学的研究も、同様に2018年度も解析を継続する。
|