研究実績の概要 |
1994年の予防接種法改正により風疹ワクチン接種率が低下したことにより近年風疹が大流行し、2013-14年にかけて45例のCRSの出生が報告されている。風疹ウイルスの感染力は麻疹などに比して高くないため不顕性感染率が高く(30%)、妊娠中感染の自覚のないまま出産に至るケースが多いことから、未診断のCRS児もさらに存在することが推測される。難聴は出生後より遅発性に進行する例も少なくなく、妊娠中に感染すると合併症の有無に関わらず難聴の発症は90%以上とされている。先天性難聴の約50%はいまだ原因が判明していなかったことから、その中に潜在性のCRS児が混在している可能性が否定できない。 現状では、CRSの診断として、母体の風疹罹患が明らかな例や出生直後の疑わしい症例に対してのみ体液よりウイルス分離が行われている。遅発性の難聴や成長してから発達遅滞などが明らかになったときに風疹ウイルスが関与した可能性をさかのぼって診断することは困難である。 しかし申請者は、抽出条件の最適化により、困難とされていた臍帯からのRNAウイルス分離を可能にし、さらにCRS児の保存臍帯より風疹ウイルスのRNA分離を行い、出生後30年以上経過した臍帯からでも風疹の胎盤感染を証明することにも成功した(Miyata I, Clin Inf Dis,2014)。 そこで本研究では、原因が明らかではない先天性・進行性難聴症例に対して本検査方法を用いて妊娠中の風疹感染の有無を検査し、難聴発症と風疹ウイルス感染の実態、および先天性難聴児における潜在性CRSの頻度を明らかにすることを目的とした。原因検索の手段として、臍帯を用いてウイルスの胎内感染を検索する方法はすべてのウイルス感染検索につながる画期的な方法であり、これにより原因不明なウイルス胎内感染を検索する方法を樹立することが可能になる。
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