研究課題/領域番号 |
15K10772
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
五島 史行 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 平衡覚障害研究室, 室長 (80286567)
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研究分担者 |
北原 糺 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30343255)
鳥海 春樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30528203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 片頭痛 / めまい / エクソソーム / microRNA let-7b / TLR7 / TRPA1 |
研究実績の概要 |
内耳培養細胞HEI-OC1を痛みストレス誘導剤でありTRPV1のリガンドであるカプサイシンで処理した際の細胞生存率は、濃度依存性に低下するが、時間依存性には低下しないという非常に興味深い当初計画とは全く異なる結果を得た。さらに、カプサイシンで処理した際のTRPV1の発現も、変化はするものの有意差は認めず、細胞痛み刺激マーカーとしてp-ERKの発現を検討したが、こちらも有意差は認めなかった。そのため、内耳への疼痛刺激の詳細を再考し、疼痛刺激エクソソームの一つであるmicroRNA let-7bとそのレセプターToll-like-Receptor 7(TLR7)の機能評価(Lehmann SM et al, Nature Neuroscience, 2012)を行うこととした。その結果、micoRNA let-7bを遺伝子導入した細胞と直接投与した細胞は、時間依存性・濃度依存性に細胞生存率が低下することを確認した。また、細胞痛み刺激マーカーとして用いたp-ERKの発現も、micoRNA let-7b遺伝子導入細胞と直接投与細胞ともに有意な発現増加を認めた。さらに、micoRNA let-7bのレセプターでもあるTLR7と、TLR7とリンクして機能するTRPA1 の発現は、ともにmicoRNA let-7b遺伝子導入細胞と直接投与細胞ともに有意な発現増加を認めた。この結果は、エクソソームに含有されたmicoRNA let-7bは、TLR7とTRPA1を介して細胞内へ移行し、内耳感覚細胞の細胞死制御と疼痛刺激ともに深く関与することを示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述したように、内耳培養細胞HEI-OC1をカプサイシンで処理した際の細胞生存率、TRPV1の発現、細胞痛み刺激マーカーp-ERKの発現では、変化はするものの有意差は認めないという当初計画とは異なる結果を得たため、内耳培養細胞HEI-OC1の痛みによる刺激方法の変更を余儀なくされた。しかし、microRNA let-7bによる刺激では、microRNA let-7bが培養液中ではエクソソームに含有され、細胞外から細胞内にTLR7を介して刺激を加え細胞死制御を行うこと、さらにはTLR7にリンクする形でTRPA1の刺激を介して、内耳細胞内に疼痛刺激を加える可能性を示唆する結果を得たことは、今後の研究推進に大きな意味を持たせると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
microRNA let-7bが培養液中ではエクソソームに含有され、細胞外から細胞内にTLR7を介して刺激を加え細胞死制御を行うこと、TLR7にリンクするTRPA1の刺激を介して内耳感覚細胞内に疼痛刺激を加えることを形態と機能の両面から検討する。まず、microRNA let-7b導入細胞、microRNA let-7b inhibitor 導入細胞、microRNA let-7b処理細胞、microRNA let-7b inhibitor処理細胞を準備する。形態については、各細胞について、1.TEMによる細胞内超微細構造の観察、2.SEMによる細胞壁構造の観察、3.TEMによるエクソソームに含有されたmicroRNA let-7bの形態観察を行う。機能面では、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、TLR7とTRPA1の細胞内局在を各細胞について検討する。これらの変化を定量化するために、核タンパク質、細胞質タンパク質、膜タンパク質の抽出を行い、microRNA let-7bがTLR7とTRPA1を介して与える内耳感覚細胞の核内・細胞質内、細胞膜の変化をwestern blot法により定量化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
内耳培養細胞HEI-OC1を痛みストレス誘導剤でありTRPV1のリガンドであるカプサイシンで処理した際の細胞生存率は濃度依存性に低下するが、時間依存性には低下しないことを確認し、TRPV1の発現、細胞痛み刺激マーカーp-ERKの発現では、変化はするものの有意差は認めないという当初計画とは異なる結果を得たため、内耳に対する痛み伝達刺激における詳細を再検討する必要がでてきたことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬費(microRNA導入キット 10200円x2、microRNA let-7b 52000円x2、let-7bインヒビター 53000円x2、核タンパク質・細胞質タンパク質抽出キット 62000円x2、細胞膜タンパク質抽出キット53000円x2、Western blot 試薬:80000円x3)、抗体費(TLR7 49000円x2、TRPA1 54000円x2)の購入を必要とする。さらに、本研究の成果を国内外に示すために、国内、国外への渡航費用として使用する予定である。
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