研究課題/領域番号 |
15K10773
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚平衡覚研究部, 研究員 (60415891)
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研究分担者 |
難波 一徳 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚平衡覚研究部, 研究員 (60425684)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内耳奇形 / 難聴遺伝子 / 神経芽腫細胞 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
内耳奇形を伴う難聴のほとんどは原因不明である。研究代表者らは蝸牛神経低形成を伴う難聴患者において、エクソーム解析により新規の難聴原因候補遺伝子ZBTB10を同定し、これが蝸牛神経細胞で発現していることを確認している。本研究は、ZBTB10の内耳形態形成における役割を解析することを目的とする。平成27年度は、I:神経突起伸長中の神経細胞に対して本遺伝子の機能解析実験をおこなった。また、II:ゲノム編集技術を用いてZbtb10突然変異マウスを作成した。 I:神経細胞に対する本遺伝子の機能阻害実験 神経芽腫細胞NB-1は、cAMP刺激により神経突起伸張を起こすが、この時、ZBTB10発現量が上昇することを研究者は明らかにした。正常ZBTB10、または難聴患者で検出された変異型ZBTB10を発現し、かつN末端に蛍光タンパク質mCherryを融合タンパク質として発現するベクターを作成し、これをNB-1細胞に導入した。ZBTB10を強制発現させたNB-1細胞はmockベクター導入時に比較しほとんどが突起伸張をせず、細胞死に至ることが観察され、本遺伝子の精密な発現量調節が、神経細胞の生存・分化に重要であることが示唆された。現在、RNA干渉法によるZBTB10発現量調節と細胞増殖・分化との関連解析実験を実施し詳細な解析を続行している。 II:ゲノム編集技術を用いたZbtb10突然変異マウスの作成 CRSPR/Cas9法を用い、難聴患者で検出されたnonsense変異とほぼ同様の位置にフレームシフト変異をヘテロに持つマウスを二系統作出することに成功した。うち一系統はオスでC57BL/6マウスとの継代にも成功し、今後繁殖させて聴力・その他の表現型・内耳形態を解析していく予定である。もう一系統はメスで、現在のところ繁殖に成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経芽腫細胞NB-1に対する遺伝子導入には様々なリポフェクション試薬による導入効率が悪く、electroporation法の条件検討に時間を費やした。またRNA干渉法についても、当初のsiRNAの導入効率の評価法が不明確であり、あらたにsiRNA発現ベクターを構築する必要が生じたため、細胞実験が予定より遅れている。一方Zbtb10突然変異マウスの作成に成功し、動物実験の準備は予定より早く進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験は、平成27年度までに遺伝子導入法が確立されたので、今後はBrdU取り込みや神経突起伸張を指標として、RNA干渉法によるZBTB10発現量調節と細胞増殖・分化との関連解析実験を着実に実施していく。動物実験は聴力測定だけでなく、眼球運動の測定も試行する。エンドポイントを3か月齢として内耳形態観察へ移行するが、一部の動物は長期間飼育し他臓器への影響も観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の実験計画における、培養細胞実験における遺伝子導入試薬の変更にともない、試薬消耗品にかかる経費が計画よりも少額となった。また、動物実験における電気穿孔法による胎仔への遺伝子導入の変更にともない、経費が少額となった。また、細胞実験の遅れにより、学会発表一回分の旅費を計上しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は細胞実験および動物実験を集中的におこなうため、試薬消耗品に係る経費が多いと予想される。また実験の結果次第ではあるが、一部外部委託により、遺伝子発現量の網羅的解析を計画している。
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