研究課題/領域番号 |
15K10774
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
難波 一徳 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60425684)
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研究分担者 |
鈴木 喜大 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (40712659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SLC26A4 / STAS / 結晶化 / 精製 / 大腸菌 / 発現ベクター / GFP融合 |
研究実績の概要 |
ペンドレッド症候群は、高度両側性感音性難聴および甲状腺水腫を伴う常染色体劣勢遺伝形式を取る遺伝性疾患である。前庭水管拡大および蝸牛低形成を呈し、臨床的に診断される。原因遺伝子は主に陰イオントランスポーターであるペンドリンをコードするSLC26A4 が知られており、発症の原因となるその病的変異は、先天性難聴の中で10%と高い発生率を占めている。特に高頻度に出現するSLC26A4遺伝子の病的変異p.H723R は、本遺伝子変異を原因とする患者の約50%もの頻度を占める著名な病的変異である。本研究では、このp.H723R変異を持つ高頻度のペンドレッド症候群の患者に有効な分子治療薬の開発を視野において、このp.H723R 変異による構造障害メカニズムを明らかにすることを目的とし、本研究のp.H723R 変異を含むSLC26A4のSTASドメインのX 線結晶解析を開始した。 X線結晶解析では、結晶化のために大量の精製蛋白質が必要であるため、SLC26A4のSTASドメインの大腸菌の6種類の大量発現系ベクターの構築を行った。それぞれの大腸菌ベクターを大腸菌Top10に形質転換を行い、IPTG誘導により蛋白質の発現を行い、SDS-PAGEによる発現確認を行った。その結果、蛍光蛋白質EGFPが正常型STASドメインのN末端に修飾されたpET28aベクター(yEGFP-STAS/pET28a)のみ良好なSTASドメインの発現に成功した。 本ベクターは、正常に発現すると蛍光シグナルを呈するが、ネガティブコントロールによる変性状態で発現した場合は蛍光シグナルが観られなかった。つまり、蛍光シグナルにより精製のトレースが行いやすく、また安定すると考えらえるため、本研究成果は、EGFP融合型のSLC26A4-STASドメインの大量発現および精製が結晶化が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
蛋白質のX線結晶解析では、良質の結晶を得ることが重要であり、そのために発現効率の優れた発現ベクターの構築が不可欠である。 対象とするSLC26A4のSTASドメインは不安定であり、安定した発現が得られるまで、GST融合などベクターの種類を変えて構築を試みる必要があった。yEGFP-STAS/pET28aで発現が成功するまで、全部で6種類のベクター構築を試みたため、当初の予定より時間が掛かった。そのため本研究は、遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
発現に成功した正常型yEGFP-STAS/pET28aを用いて、p.H723R変異型STASドメインの同ベクターを完成し、引き続き精製、結晶化を試みる。 精製および結晶化条件の検討は、研究分担者による同EGFP融合型pET28aにより発現した蛋白質の精製および結晶化の報告(Suzuki.Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2010 Oct;66(Pt 10):1059-66)を参照し、効率よく研究を進められると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、前年度中に精製、結晶化、構造解析を共同実験施設である高エネルギー加速器研究機構へ出張、実験を行うため、研究費を充てる予定であった。しかし、記述にあるようにEGFP融合STASドメインの発現ベクターの構築を成功させるまで、6種のベクターの構築と発現確認を行う必要があった。この理由により実験が追加され、出張先の高エネルギー加速器研究機構で予定していた実験を先送りする必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
作成したEGFP-STAS/pET28aベクター、およびp.H723Rの同ベクターを用いて、大量発現、精製、結晶化、構造解析を試みる。その際、出張費、実験試薬類の購入のため次年度使用額が充てられる予定である。
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