研究課題/領域番号 |
15K10774
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
難波 一徳 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60425684)
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研究分担者 |
鈴木 喜大 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 特命准教授 (40712659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発現系 / 大腸菌 / SLC26A4 / STAS / ベクター / pET / pGEX |
研究実績の概要 |
本研究では、SLC26A4 の頻出変異であるp.H723R 変異が見られるSTASドメインのX 線結晶解析を行い、このp.H723R 変異による分子病態の機序を構造の切り口から明らかにすることを目的とし、将来的に本変異を持つ患者に有効な分子治療薬の開発に結びつけることを目的とする。 現在に至るまで、大腸菌大量発現系ベクターpET15bにSTASドメイン(535-729.aa) の配列を挿入した発現系(STAS/pET15b)の構築、また、STASドメインには不安定なループ領域(574-645.aa)を除いた同STASドメイン領域の発現系(STAS-trunc /pET15b)、GST融合蛋白質による安定性を高めることを考慮しpGEX-6P-1ベクターに組み換え同発現確認を行った。また、無細胞系発現系の構築および発現実験と、N末端領域にEGFPを結合させたベクターの構築とその発現検討実験を行った。しかし、殆どが変性による不溶化および発現不全であった。EGFP融合蛋白質による安定性を高めることを考慮しpET28a-yEGFP融合ベクターに組み換え同発現確認を行ったところ、多少の可溶性分画の発現に成功した。EGFP融合蛋白質による構造の安定寄与が考えられた。 しかし、大量発現には達しておらず、依然大量発現のための大きなブレークスルーを必要とする状況である。25度による低温培養化で発現条件の検討を行ったが、大きな改善は観られなかった。 以上の経緯より、大腸菌発現系によるSLC26A4のSTASドメインの大量発現は困難であると結論付けた。ヒト由来の蛋白質発現は、HEK293細胞やバキュロウイルス昆虫細胞による発現系が有効であることから、現在、これらの系を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
SLC26A4のSTASドメインおよびそのp.H723R 変異配列を組み込んだ大量発現系の構築および発現確認実験は、無細胞系発現ベクターも含めて一通り行ったが、全てが不溶性分画つまり、変性するか、目的蛋白質の発現がほぼ観られないという結果であった。また、本遺伝子のSTASドメイン(p.H723R 変異含む)を組み込んだ大腸菌は、何らかの理由により大腸菌培養において正常な増殖が観られず、早い段階で大腸菌が死滅してしまうため、ヒトSTASドメインは大腸菌にとって予期できない増殖阻害が生じた可能性が考えられた。 これらの問題を改善すべく、温度による培養の検討など、現在考えられるすべての条件検討発現実験を行ってきた。 その多種の発現系構築と条件検討に多くの時間を費やしている経緯もあることから、進展が遅れている理由とする。
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今後の研究の推進方策 |
現在、SF9などの昆虫細胞発現系、またヒト由来培養細胞HEK293細胞の発現系の設計をおこない、現在構築を行っている。また、STASのループ領域にリゾチームを融合したものはSTASの可溶化および安定化に寄与するものと考え、現在構築中である。これらのベクターでの発現実験を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度使用予定であった金額は発現用大腸菌や必要試薬を購入する予定であったが、発現実験が進まなかった理由により使用が遅れたためである。現在進行している実験において発現促進のため試薬を購入予定である。
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