研究課題/領域番号 |
15K10775
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中丸 裕爾 北海道大学, 大学病院, 講師 (20344509)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | TSLP |
研究実績の概要 |
アレルギー性鼻炎は増加傾向にあり、現在日本国民30%以上が罹患する国民病となっている。しかし治療は抗原回避や対症療法のみで、根治を期待できる方法は未だ開発されていない。 近年感染を契機に気道上皮細胞から放出されたTSLPが樹状細胞などからTh2サイトカインの産生を誘導することで、アレルギー性疾患の発症に関与することが明らかになってきた。アレルギー性鼻炎においてもTSLPの遺伝子多型がアレルギー性鼻炎の発症に関連することが示され(Nilsson D et. al. Allergy. 2014)、疾患の発症また病態の維持に関与すると考えられる。しかしTSLP自体の発現調節機序は明らかになっていない。 TSLPは主に上皮細胞に発現している。組織に感染が生じると上皮細胞より放出され上皮下の樹状細胞と結合することで、Th2タイプのサイトカイン産生を誘導する。TSLPはアレルギー性鼻炎や喘息などアトピー性疾患の上皮に高発現しており、アトピー性疾患の発症また病態の維持に関与すると考えられる。 近年、DNAと結合しているヒストン蛋白がアセチル化やメチル化などの修飾をうけクロマチンが構造変化する(クロマチンリモデリング)ことでDNAからの転写が調節されていることが判明してきた。この遺伝子制御機構は発生、細胞分化や癌を含む様々な疾患の発症に関与していると推測されている。 ヒストンアセチル化酵素は喫煙や摂食などの酸化ストレスによりクロマチンの構造変化を起こし、様々な疾患発症、病態形成に関与する。アレルギー性鼻炎や喘息などのアレルギー性疾患においても酸化ストレスが疾患を増悪することが示されており、TSLPの産生にヒストンアセチル化酵素が関与するかどうかを調べるのが、本研究の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレルギー性鼻炎について検討するため、ヒト気道上皮細胞株(Beas-2B細胞)を使用した。細胞がコンフルエントになったところで、ヒストンアセチル化酵素の抑制剤を添加した。 薬剤投与30分後に細胞を刺激するため、ODN2006を最終濃度1μMで添加した。 ODN2006添加24時間後に細胞を回収して、RNAを抽出した。 real time PCR法にてTSLPmRNAの産生量の変化を調べた。 以上の実験の結果、ヒストンアセチル化酵素抑制剤の濃度依存性にTSLPの産生が抑制された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は蛋白レベルでの発現を検討し、動物モデルを使い研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会への参加が、都合により1件キャンセルとなり、その分の旅費が残額となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
国内外の学会に参加し、研究成果の発表を行う。また、実験試薬を購入予定。
|