アレルギー性鼻炎は増加傾向にあり、現在日本国民30%以上が罹患する国民病となっている。しかし治療は抗原回避や対症療法のみで、根治を期待できる方法は未だ開発されていない。近年感染を契機に気道上皮細胞から放出されたTSLPが樹状細胞などからTh2サイトカインの産生を誘導することで、アレルギー性疾患の発症に関与することが明らかになってきた。アレルギー性鼻炎においてもTSLPの遺伝子多型がアレルギー性鼻炎の発症に関連することが示され疾患の発症また病態の維持に関与すると考えられる。しかしTSLP自体の発現調節機序は明らかになっていない。近年、DNAと結合しているヒストン蛋白がアセチル化やメチル化などの修飾をうけクロマチンが構造変化する(クロマチンリモデリング)ことでDNAからの転写が調節されていることが判明してきた。この遺伝子制御機構は発生、細胞分化や癌を含む様々な疾患の発症に関与していると推測されている。 アレルギー性鼻炎患者におけるTSLP産生にヒストンアセチル化酵素がどのように働くか検討するため、ヒト気道上皮細胞株(Beas-2B細胞)を使用した。細胞がコンフルエントになったところで、ヒストンアセチル化酵素の抑制剤を添加した。薬剤投与30分後に細胞を刺激するため、ODN2006を最終濃度1μMで添加した。ODN2006添加24時間後に細胞を回収して、RNAを抽出した。real time PCR法にてTSLPメッセンジャーRNAの産生量の変化を調べた。 以上の実験の結果、ヒストンアセチル化酵素抑制剤の濃度依存性にTSLPの産生が抑制された。 またヒストンアセチル化酵素促進剤の濃度依存性にTSLPの産生が亢進した。
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