本研究は、メタボリックシンドロームのマスターレギュレーターとして重要な役割を演じている核内レセプターPPAR (Peroxisome Proliferator-Activated Receptors)の気道アレルギー疾患発症に与える影響について検討し、PPARを介した炎症制御による新たな気道アレルギー疾患の治療戦略を目指すことを目的としている。 著明な好酸球集積を伴う好酸球性副鼻腔炎は難治性、易再発性でありステロイド薬が第一選択として使用されているが新たな治療アプローチが求められている。今回好酸球生副鼻腔炎の鼻茸から得た抽出液による好酸球遊走能をTAXIScanによりリアルタイムで好酸球の水平方向の細胞移動をCCDカメラで記録解析した。さらに好酸球をPPARγのアゴニスト(Ciglitazone)で前処理し好酸球遊走活性が抑制されるか検討した。 コントロールに比較し好酸球性副鼻腔炎から得た鼻茸抽出液による好酸球遊走能は増加していた。さらにPPARγのアゴニストは好酸球性副鼻腔炎の鼻茸抽出液による好酸球性遊走活性を濃度依存性に有意に抑制した。以上の結果からTAXIScanによる好酸球性副鼻腔炎における好酸球遊走能の測定は少量のサンプルから可能であり治療の個別化を可能にする方法と考えられた。またPPARγが好酸球性副鼻腔炎における好酸球遊走能を抑制したことからPPARγのアゴニストが新たな上気道アレルギー疾患の治療戦略の一つとなる可能性が示唆された。
|