研究課題
【背景】近年、好酸球性副鼻腔炎が増加している。従来の慢性副鼻腔炎と比べて、ステロイドの内服が著効するが、難治性であることが特徴である。その病態には、フィブリン沈着が鼻ポリープを形成しており、フィブリンを分解するtissue plasminogenactivator(t-PA)産生が鼻粘膜上皮において低下していることが重要である。本研究は、気道上皮におけるt-PA 産生のメカニズムの解明を目的としている。【結果】①気道上皮細胞における23 種の刺激を用いたt-PA 発現実験:選出した23 種類の刺激をNormal Human Broncheal Epithelial cell (NHBE) に加えた結果、retinoic acid (RA)により、t-PAの産生がcontrolのおよそ10倍の遺伝子発現(real time PCR)、4倍のタンパク発現(ELISA)がみられた。②t-PA 産生促進刺激を用いた実験:t-PAが気道上皮細胞中に貯蔵、放出されるメカニズムを解析した。その結果、t-PA産生を亢進させる刺激(RA)においても、産生を低下させる刺激(IL-13)においても、産生されたt-PAのおよそ80%のt-PAが上清中に放出された。また、鼻ポリープ中で多いIL-13の刺激下にRAを加えると、t-PAの産生はIL-13単独と比べて上昇していた。③慢性副鼻腔炎の鼻茸と比べて中ではアスピリン喘息患者の鼻ポリープ中ではRAの濃度は優位に低かった。【結論】これらのことから、より重症なアスピリン喘息において鼻ポリープが遷延する病態としてポリープ中のRAが少なくなってきたためではないかと考えられる。鼻ポリープにRAを塗布するなどの操作をすることで、ポリープの縮小する可能性を見出した。今後治療応用を検討していく。現在、論文投稿中である。
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