研究課題
本邦の慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis: CRS)においては、これまで欧米に多いとされてきた好酸球優位な炎症性細胞浸潤を特徴とする難治性のフェノタイプが増加しており、好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic CRS: ECRS)と呼ばれている。術後再発率が高く、予後不良な病態とされているが、その詳細な機序は解明されていない。ステロイドの投与により病態は改善するが、投与の中止により再燃するため完治はしない。これまで、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を基盤とした手法を用いて、ECRSおよび非好酸球性副鼻腔炎(non-ECRS: NECRS)患者から採取した組織中の遺伝子発現解析を実施してきた。その結果、ECRSにおいてはNECRSや正常粘膜組織とは異なる、特徴的な遺伝子発現プロファイルが存在することを同定した。さらに,ECRSにおける遺伝子発現を制御する上流因子を特定するためパスウェイ解析も行い、これらの研究成果については原著論文にて発表した(Int Forum Allergy Rhinol. 2018; 8(5): 592-604.)。本研究課題の最終年度である平成30年度は、CRSにおけるエピジェネティクスの関与を調べるため、鼻茸組織由来の培養線維芽細胞について、網羅的なDNAメチル化解析を行った。その結果、鼻茸組織由来の線維芽細胞では、正常鼻粘膜組織由来細胞に比べて、広範なDNAメチル化の変動が確認された。すなわち、鼻茸組織中の組織構成細胞は、エピジェネティクスな経路を介して表現型が変化しているという重要な知見を明らかにした。
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Auris Nasus Larynx.
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臨床免疫・アレルギー科
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