研究成果の概要 |
慢性副鼻腔炎の術後の予後について,統計学的にリスク因子を同定したところ,これまで指摘されてきた好酸球関連因子はリスク因子とならなかった.また,マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を基盤とした手法を用いて,好酸球性副鼻腔炎および非好酸球性副鼻腔炎患者から採取した組織中の遺伝子発現解析を実施し,慢性副鼻腔炎における8つの特徴的な遺伝子発現プロファイルを同定した.さらに,好酸球性副鼻腔炎における遺伝子発現を制御する上流因子を特定するため,パスウェイ解析を行ったところ,transforming growth factor (TGF)-βなどが好酸球性副鼻腔炎の上流因子の一つとして同定された.
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
好酸球性副鼻腔炎や非好酸球性副鼻腔炎などのフェノタイプとは関係のない,治療抵抗性に関するエンドタイプを同定することにより,これまで報告されてきた好酸球に関連する因子以外の難治化因子が明らかとなった.その結果,既存の治療に抵抗性の慢性副鼻腔炎に対する,新規治療の開発や創薬に繋がることが期待される.また,慢性副鼻腔炎患者の術後の予後とDNAマイクロアレイによる鼻組織の網羅的遺伝子発現解析をもとにした病態のエンドタイプ分類は,慢性副鼻腔炎全体の治癒率の向上に貢献する.
|