研究課題/領域番号 |
15K10794
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柏倉 淳一 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (90373290)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マスト細胞 / HRF / 花粉症 |
研究実績の概要 |
ヒスタミン遊離因子(以下HRF)のアレルギー炎症に対する効果を検討することが本研究の目的である。我々はすでに喘息や食物アレルギーにHRFが関与している結果を得ているが花粉症に対してどのように作用するか不明である。HRFは単量体および二量体で存在しHRF反応性IgEと結合することはすでに報告しているが、マスト細胞に対する活性化に違いがあるかどうかは不明である。本申請者らは二量体HRFがマスト細胞上に存在するHRF反応性IgEを架橋しマスト細胞活性化を誘導すると考えており、二量体HRFがマスト細胞活性化に必要かどうかを調べることは、今後の研究結果を理解するうえで必要不可欠である。そこで研究実施計画を変更し、本年度はマスト細胞活性化において単量体HRFと二量体HRFの効果が異なるかどうかを検討した。単量体および二量体HRFは大腸菌で発現し精製した後、ゲルろ過カラムをもちいて精製した。抗原感作したマウス組織より回収したマスト細胞を用いて、細胞活性化後のLAMP-1発現の変動を指標にマスト細胞活性化試験を行った。抗原を用いて組織マスト細胞を刺激するとマスト細胞上のLAMP-1発現が抗原濃度依存的に上昇した。二量体HRFで刺激したマスト細胞も同様にLAMP-1発現が上昇したのに対し、単量体HRFはマスト細胞の活性化を誘発しなかった。以上の結果から、マスト細胞活性化には二量体HRFが必須であることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
より詳細なHRFの作用機序を解明することが、その後のin vivoでのHRFの役割を理解する上で重要であることと判断したため、研究実施計画を変更し、in vitroでの二量体HRF作用の確認を最初に検討した。組織マスト細胞を精製する際、使用するコラゲナーゼの種類や作用時間、さらには精製方法やその後のマスト細胞検出方法の検討が予想以上に困難だったため、研究の進捗状況がやや送れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度における研究結果から、二量体HRFがマスト細胞活性化に重要であることが証明された。次年度からは花粉抗原で感作し、鼻腔内に花粉抗原を投与したマウスにHRF阻害剤を予防的および治療的に投与し、花粉症におけるHRFの役割を解析する予定である。特に本年度の研究結果から二量体HRFの重要性が示されたので、鼻汁中や鼻粘膜組織中の二量体HRF量の定量も次年度より開始するよう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス組織マスト細胞回収の条件検討の遅延のため、必要マウス数が使用計画より少なかったこと、および初年度の研究計画を変更したため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度よりin vivoによるHRFの効果を検討するため、本年度繰越した予算はマウスの購入に使用する予定である。
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