ヒスタミン遊離因子(Histamine-releasing factor: HRF)はIgE依存性マスト細胞/好塩基球活性化反応に関わる液性因子として同定された。我々の先行研究でHRFは一部のIgEおよびIgGと結合し、その結合にはHRF分子内のN末端19アミノ酸およびH3ドメインと抗体の可変部領域が関わることを証明した。また、HRFに反応する(HRF反応性)IgEを投与したマウス耳介ではHRF誘導性のアレルギー反応が誘発されるが、反応しない(HRF非反応性)IgE投与耳介では反応が観察されないことから、HRF依存性アレルギー反応にはHRF反応性IgEが関与することが明らかとなった。一方、結合部位の探索実験から新規HRF阻害剤を開発し、喘息マウスへ投与した結果、マスト細胞依存性喘息症状が改善され、HRFが新規アレルギー治療の候補分子と成ることが示唆された。 本申請研究ではHRFの花粉症発症機構における役割を解析することを目的とし研究を行った。本年度は生体レベルでのHRFの役割を解明するため、Katoらが樹立した花粉症マウスモデルを用いて、その役割を検証した。花粉症が発症したマウスにHRF阻害剤を投与したところ、花粉抗原投与後のくしゃみ回数が阻害剤非投与群と比較して、有意に抑制されていた。またHRF阻害剤投与マウスでは血中総IgE/IgG1抗体価の有意な低下も観察された。今後は、花粉症マウスでの血中HRF反応性抗体価および鼻炎患者血清中のHRF反応性抗体価の変動を検討し、これらの値が新たな花粉症発症のバイオマーカーと成りうるか、さらにはHRF阻害剤が新たな花粉症治療薬となるかどうかについて解明していきたい。
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