研究課題/領域番号 |
15K10795
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
香取 幸夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20261620)
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研究分担者 |
鳥光 慶一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00393728)
小山 重人 東北大学, 大学病院, 准教授 (10225089)
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耳鼻咽喉科学 / 喉頭科学 / 嚥下 / 咀嚼 / フレキシブル電極 / 筋電図 |
研究実績の概要 |
日常の生活の中での食事の状態、すなわち咀嚼嚥下複合体を低侵襲にモニタリングするために、被験者の頚部および顔面に貼付して筋電図測定を行うフレキシブル電極の開発を進めた。 伝導性高分子ポリマーを絹製の布に被覆した電極を細長い形にトリミングし、健常被験者の頚部および頬部に貼り、市販の手術用創部ドレープを用いて固定を行った。電極は被験者の体表面の凹凸にフィットし、軽く、違和感なく装着された。これにより嚥下時および咬合咀嚼時に頚部や顔面が動いても、電極が一定時間ずれることなく、筋電図の測定を行うことが可能になった。アースとなる電極を含めて3枚のフレキシブルシルク電極をそれぞれ10mm程度離して平行に貼ることで、良好な筋電図の波形が得られた。 この電極とPCを組み合わせた、移動可能な検査装置を試作した。さらに、実際の咀嚼回数や嚥下回数の測定できるように、装置の感知条件を明らかにすることを試みた。すなわち咀嚼咬合や嚥下の際の体表の動きを観察しながら、筋電図計測を行い、摂食嚥下時の体表のモーションと測定し得た筋電図の相関を検討した。 安静座位における検査では、とくに咀嚼運動においては咬筋由来の大きな筋電図変化を捉えることが可能であった。しかしながら嚥下運動では、嚥下咽頭期の頚部筋活動が有意な振幅をもって捉えられるものの、被験者の体動や発声による筋電図変化も大きな振幅をもって観察され、その選別が現状の装置では困難であることを確認した。 この測定時のアーチファクトを少なくする電極の添付部位を探索するために、嚥下運動ならび発声に関わる喉頭の筋、軟骨および関節の解剖学的特徴をヒト高齢者の組織切片を用いて検討した。この観察の中で、高齢者の喉頭関節では静的な慢性炎症に伴う硬化と滑膜組織の変化があることを見出し、新知見として報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被験者の体動や発声による筋電図変化が研究開始前の予想以上に大きく検出され、嚥下動作による筋電図変化の抽出に工夫を要している。そのため現時点では、健常人に対する咀嚼嚥下複合体のモニタリングが安定して実施できておらず、当初の研究1年目の到達目標からやや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
現在計測に用いているフレキシブル電極のサイズ、頚部での貼付場所、ならびに筋電図解析のソフトを調整することにより、安定して咀嚼ならびに嚥下動作の検出が可能になることを目指す。その一方で、嚥下時に挙動する咽頭・喉頭の筋群の形状と生理的動態を組織像や透視検査画像を用いて見直し、嚥下動作に対するモニタリング方法に関して本研究の方法と併施して行える適切な手段があるかどうかも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
嚥下時の筋電図測定の実験が、測定時の発声や体動によるアーティファクトを除去することが難しく、遅れている。喉頭筋などの組織学的検討を行いつつ修正を図っているが、実験回数が減少している分、その実験に使用する電極作成費などの物品費が減少し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遅れている筋電図測定の物品費として使用する。また、筋電図測定を有効に行うことを目的に喉頭の組織学的検討を追加しているが、その組織プレパラートの作成費用の物品費として使用する。
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