研究課題
癌患者における末梢血中の単球の動向は未だ不明であるが、近年単球はCD14とCD16の発現により3つの亜群に分かれることが知られるようになった。頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血中単球サブセットの動向を明らかにするため、癌患者54症例と非癌患者24症例の末梢血における単球の発現分子を調べ、また原発腫瘍組織の免疫染色を行った。その結果、癌患者の末梢血中のCD14+CD16+Intermediate monocyteの比率が、非癌患者と比べ低下していることを見出し、またIntermediate monocyteでは免疫抑制性の分子であるHLA-GやPD-L1の発現が上昇していることを明らかにした。さらにCX3CR1、HLA-A,B,C、HLA-DR、CD68などの、単球の成熟度を示すマーカーが癌患者の単球では低下しており、癌患者末梢血中のIntermediate monocyteは、非癌患者に比べ未熟であることが分かった。さらにはそれら成熟マーカーの発現低下が予後不良因子に直結することが明らかになり、単球の制御が新たな免疫療法のターゲットとなり得ることが示唆された。その上でin vitroの系で単球と頭頸部癌細胞株との共培養を行い、患者検体同様、癌細胞と共培養するとIntermediate monocyteの成熟マーカーが低下することを確認できた。さらにin vitroでも患者検体でも、単球上のCD51(Integrin alpha-V鎖)が癌症例で発現増強していることが分かり、MFG-E8とCD51を介した単球-マクロファージの貪食能も抗腫瘍免疫に関与している可能性がありそうだ。この成果の一部は国内外の学会で報告され、最終報告は現在英文国際誌に投稿中である。
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