研究課題/領域番号 |
15K10802
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
朝蔭 孝宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50361481)
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研究分担者 |
安藤 瑞生 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60511467)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / 遺伝子変異 / シークエンス / ゲノムマーカー |
研究実績の概要 |
TP53は頭頸部扁平上皮癌において最も変異頻度の多い癌抑制遺伝子であるが、東アジア人に高頻度の下咽頭癌についての情報は少ない。下咽頭癌手術例のTP53遺伝子変異及びp53タンパク発現の有無と、近年頭頸部癌の発がん因子として注目されているHPV感染の有無を明らかにすることを目的に研究を行った。下咽頭扁平上皮癌根治切除例57例を対象とし、後向きに検討した。TN分類の内訳はT1/2/3/4a=4/5/31/17例、N0/1/2(a/b/c)=24/8/25(1/20/4)例であった。TP53変異検索はexon2-9のサンガー法にて塩基配列を決定し、p53発現は免疫染色法により評価した。HPV感染に関しては代理マーカーとして知られるp16マウスモノクローナル抗体(1:100) (Santa Cruz社, sc-56330)を一次抗体に用い、腫瘍細胞の70%以上の細胞でその細胞質が染色されている症例を陽性と判定した。また、p16免疫染色でのHPV偽陽性を除外する目的でp16陽性症例にはISH-HPVを追加で行った。39例(68%)にTP53変異を認めた。またp16免疫染色では3例においてp16がほぼ全ての腫瘍細胞がびまん性に染色されp16陽性と判定された。しかしこれら3例のISH-HPVでは、逆にほぼ全ての腫瘍細胞の核内染色が認められず、3例ともISH-HPV陰性と判定された。すなわち、検討した57例では全例がHPV非関連癌と判断された。このことから下咽頭癌発症にHPVは関与しないことが示唆された。また本研究におけるp16陽性頻度は下咽頭癌のこれまでの報告と比較して低率であった。これは多くの報告が多民族国家のシンガポールや欧州からのものであったことを考慮すると、人種差が大きく関係しているものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の施設移動、研究分担者の留学などにより本研究の遂行が滞りがちになった。
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今後の研究の推進方策 |
東京医科歯科大学内のバイオバンク事業に科として積極的に参加し、手術例全例の切除標本、血液の凍結保存を開始した。また、本研究を遂行するにあたり東京医科歯科大学内で基礎系の教室と連携して、次世代シークエンサーを用いた頭頸部癌の遺伝子解析が遂行できる体制を整備した。また、短期留学に出ていた研究分担者も帰国し本研究の遂行が加速するものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状況に若干の遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は平成28年度の遅れを取り戻し、研究を推進する予定である。
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