研究課題/領域番号 |
15K10810
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
島津 倫太郎 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50325627)
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研究分担者 |
青木 茂久 佐賀大学, 医学部, 准教授 (10448441)
倉富 勇一郎 佐賀大学, 医学部, 教授 (30225247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃酸逆流 / 下咽頭癌 / 胃液十二指腸液逆流 / 頸部食道癌 |
研究実績の概要 |
これまで我々は慢性逆流性食道炎モデルラットを用いて胃酸逆流が喉頭肉芽腫、咽喉頭異常感症および慢性咳嗽の発生機序にどのように関与するかについて研究を進めてきた。今年度は胃酸逆流が逆流性食道炎の食道外症状の一つである歯牙酸蝕について検討した。術後10週から歯冠の平坦化と歯周ポケットにおける炎症細胞浸潤を認め、術後20週にはエナメル質の露出を認めた。また舌根部の粘膜下にも炎症細胞浸潤を認め、胃酸逆流が歯牙酸蝕、歯周炎および舌炎の発症に関与する可能性が示唆された。それについて日本口腔咽頭科学会にて報告し、論文も作成し採用されている。また今回新たに、咽喉頭疾患と胃液十二指腸液逆流の関連性について検討した。胃酸逆流には60~70%の頻度で十二指腸液が混合しており、十二指腸液の逆流によってバレット食道や食道腺癌が発症すると報告されている。それは十二指腸液に含まれる胆汁酸が亜硝酸塩と結合しニトロソ化合物となることで発癌物質の生成に関与すると言われているが、明らかになっていないのが現状である。我々は下咽頭癌の発症にも胃液十二指腸液逆流が関与する可能性を考え、モデルラットを作製した。その結果、術後30週にて下部食道に腺癌の発生を認め、頸部食道に扁平上皮癌の発生を認めた。しかし下咽頭粘膜には炎症所見しか認められなかった。胃酸にて障害された粘膜上皮の再生の過程において、十二指腸液に含まれる発癌物質が加わることにより食道癌が発症すると考え、下咽頭粘膜に慢性的な刺激を加えることにより、上皮を損傷すれば下咽頭癌が生じる可能性を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頸部食道癌を発症させることができたが、現在、下咽頭癌の発症に向けて研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
胃液十二指腸液逆流モデルラットの下咽頭に化学的・機械的刺激を加えることで、粘膜上皮の損傷が生じる。その上皮再生の過程において十二指腸液に含まれる発癌物質が作用することで下咽頭癌が発症するのではないかと研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験器具などの新規購入の必要がなく、ラット購入費のみが主な物品費だったため繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国際および国内学会での研究成果の発表を計画している。
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