嚥下障害のリハビリテーション手技に関して、高解像度咽頭食道内圧計(MaonScan)を用いてその理論的根拠について検討してきた。28年度は全く新しい評価方法として、嚥下時の電気的インピーダンス(IMP)について検討した。嚥下機能評価におけるインピーダンスの測定は主に食道領域で行われてきた。IMPは2つの電極間の電圧と電流の比で表わされ電気的伝導性と反比例する。唾液や食物、消化液などの液体の伝導性は高いためIMPは低くなり、空気の伝導性はほぼゼロであるためIMPは高くなり、筋層はその中間となる。このため、嚥下した物質の性状や残留(クリアランス)について知ることができる。ペアリング電極により、通過速度やクリアランスにかかる時間、逆流についてもわかる。 嚥下機能評価のため高解像度マノメトリーを測定した時に同時記録したIMPを解析し、嚥下機能評価における有用性について検討を行った。嚥下物は、IMPが最も低い生理食塩水を用いて検討した。健常成人では食道入口部圧が平圧化した部分にIMPが低下した部分が認められた。食塊の通過を示すIMPの低下は嚥下圧のピークの前にみられ、重力による落下と嚥下圧により食塊が押し込まれている部分と思われた。一方、嚥下障害例では圧のピークの後にIMPが低下した部分があり残留を疑う所見がみられた。
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